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きぃん！ かきん、きんっキィン！
怒りに任せて刀を振るう。その怒りに、目の前の男はにやつきながらついてきた。
刀が発する火花と、薄い月明かりと、遠い松明の明かりを頼りに、二人の男は打ち合った。
ギィンッ!!
ひときわ大きな明かりを合図に、距離をとる。そのままぐるぐると走り出す。相手の隙を探るように、自身は隙を見せぬように、走り続ける。
「ふふははははぁ!!」
高笑いをした刃衛が目を見開いた。瞬間、枷をはめられたように重くなる体。
うるさい、うるさい、邪魔をするな！
「小賢しい＿＿!!!!」
一箇所に留まる隙も見せず、心の一方を解く。
刃衛が笑った。
「はははは、怒れ、もっと怒れ！ それで精一杯か!!」
感覚が研ぎ澄まされるのを感じる。
剣閃が見える。一手先が視える。
懐かしい、これは、毎日血まみれの剣を握っていた、あの時の。
(片手平づき)
読んだとおりの技が来る。難なく避ける。予想通りだ、難などあるはずもない。
(次……一文字の型、横薙ぎ、そこから十文字の型、唐竹……)
ひゅん。ひゅん。一太刀も、着物にすらかかることなく避け続ける。最後に読んだ唐竹が来た。
頭はすっかり冴えていた。十年間わざと鈍らせていた、殺し合いの思考。
(ここで崩す)
柄で刃を弾く。刃衛が驚きに目を見開く。一瞬の隙。
その隙をつく！
大きく踏み込んだ。
それが命取りと知らずに。
◆
「づ、っ…………、ぐっ」
刃衛は、どうやら両利きだったらしい。
両方の腰に刀が差してあるのは、見栄張りでも伊達でもなく、実際に使うから。もう片方の剣を抜かれて、剣心はあっけなく肩をやられた。
痛みで頭が冷えてきた。
"おい!!!"
(っ、……つるぎ)
"っ、この、やっと聞く気になったか、お前！ 一人で突っ込んでいいことあった試しねーだろ！ 人の話を聞けっていうんだよ！"
剣心は、こんな状況だというのに、少し驚いた。剣に「君」ではなく「お前」と呼ばれたのは、これが初めてだ。剣も怒っているらしい。
伏せった体からじわじわと熱が抜けていくのを感じる。血が土に染み込んでいく。
頭上から声がした。
「まだだなぁ……抜刀斎には遠く及ばない。まだ俺を殺そうと思っていないからか？ 殺さず倒そうなどと甘ったれているうちは、タバコ三本吸ううちに殺せるぞ」
"黙れ馬野郎、剣心が痛いと僕も痛えんだよ、クソ"
「……剣心！ 剣心!!」
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作者名：アオ | 作成日時：2017年3月3日 17時
