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からりと晴れた日。
太陽の下で、剣心たちはぐつぐつと煮える鍋を囲んでいた。
"……"
「……」
おでん。
一見すれば美味しそうに湯気を立てる、おでん。
紛うことなきおでんだ。
"まずい"
(こっ、こら、剣！ しー！ しー、でござるよ！)
"どーせ聞こえないよ……"
しかし、そのおでんらしからぬ苦味に剣が苦言を呈する。剣心以外にはそんな声など聞こえないので、何を言ってもいいのだが、生真面目な剣心はそう思わないようだ。
"っていうかほんとに不味いな、これ……おでんだよね？ なんで苦いの？ 何入れたらこうなんの？"
ふうふうと大根に息を吹きかけて冷ましていた左之助が、ぱくりと大口を開けてそれを放り込む。もぐもぐ。
数回口を動かした左之助が固まった。
「ねえ、みんなどう？」
自信があるのか、おでんを作った薫がにこにこと問いかける。
もぐもぐ。もぐもぐ。
みんなは微妙な顔でそしゃくを続けている。
「ねえ、みんなったら」
"強いてコメントするなら、味見しないの？ かな"
(剣！)
「あ！ 左之助ったら、美味しすぎて顔中よだれだらけ！ なーんちゃって、うふふ」
固まった左之助が顔中にかいた冷や汗をどう解釈したのか、ただの冗談なのか、薫がきゃらきゃらと笑う。
なーんにもおもしろくない。
「まじい」
ようやっと大根を飲み込んだ左之助が開口一番、言った。
むっ、と、率直すぎる感想に薫が菜箸を握りしめる。
あやめとすずめがか細く言った。
「苦いよぅ」
「辛いよぅ……」
その声を、切羽詰まった弥彦が叱咤する。
「泣くな！ 人間、生きていくためには、なにか一つくらい我慢しなきゃいけないことがあるんだぞ！」
弥彦が言うと説得力がある。なにせ最近までヤクザたちにいいように利用されてきたのだから、もう、説得力どころの話ではない。
弥彦のその言葉に自身を奮い立たせ、あやめもすずめも弥彦自身も、もう一口おでんを食する。顔はまだ微妙。
「剣心……毎日これじゃ、おめえも辛えだろうが……」
薫に聞こえないように左之助が話しかけてくる。
「いや、薫殿の料理は、食べるごとに味を増すいい料理でござる」
もく。剣心一人だけ、笑顔で一口。
「珍味じゃあるめえし……うおっ！」
「文句あるなら食うな！ 毎日タダ飯喰らいに来てるくせに！」
生の大根やら薪用の木やらを左之助に投げつけながら薫が怒る。剣心をガードにしてそれを避けつつ、左之助も負けない。
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作者名：アオ | 作成日時：2017年3月3日 17時
