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そして、 ページ30

「今日か。」

「虚さん、大丈夫?」

「嗚呼…大丈夫だ、少し…いや、何でもない。」


海はemptyに『なりきる』のだ。

世界が変わるかもしれない、その戦い。

自分の名前よりも、emptyの名が相応しい。


「ヒヨさん。」

「もう、時間なの?」

「うん。」

「エミ君は?」

「まだみたいだよ。」


虚は何かを探しに外へと出ていってしまった。

これから起こる戦いを前に皆が自由にそわそわしている。

海も少し緊張していた。


「…時間は?」

「あと2時間って所。」

「寝てもいい?」

「大丈夫だよ。」


ヒヨがベッドに潜った、海はその部屋から出る。

壁にエミが不服そうに寄りかかっていた。


「エミさんは嫌なんですか?」

「嫌なんじゃない、不快なんだよ学生さん。
君みたいな未来ある若者までここに居るとは…世も末だね。」


不服なのはヒヨの事だろう。

そして自分に未来などない。

未来があるのだったら未来を即決していた。

でももう叶わない。

ドラキュラという闇の深い種族なのだ。

『人間』としては生きていけない。


「僕は…」

「……?あれって、キメラ?」

「あ、はい。サーカス団の樹楊さんと存腹さんですね。…あのどうかされました?」

「…少し、過去と決別してくる。」


心残りはあの一瞬だけだ。

それ以外はただの微塵のかけらほども興味の湧かないゴミクズだよ。

そう言って存腹の近くに立つ。

何も言わなかった。

彼が思い出すのを待っているのだ。

憎悪、そして殺意。

存腹がエミの胸ぐらを掴む。


「てめぇ…あの時の…」

「久しぶりだね、モルモット君。」

「…エミ・ウリュス・スヴァンガーリだ、覚えてる。俺を…樹楊を、こんな姿にした。」

「…」


存腹が汚い言葉をエミに突き付ける。

胸が変に痛むのはきっと、ヒヨと重ねてしまっているのだ。

ヒヨがもし、自分があんな姿にしたと知ったら、

こんな風になるのだろうかと。


「…ごめん。」

「謝るなら樹楊に言ってくれ、俺は、いい。俺じゃない、樹楊は泣いてたんだ。」


泣いて、嗚呼。あの時のヒヨも泣いていた。

自分が泣かせてしまった。

自分の、この手で。

その手にはナイフを突き刺した痕が鮮明に残っていた。

主役→←決戦の時はまだ早い



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龍巳@キチガイ - 【 】nanashiさん» こわっ、てめぇ夜道には気を付けろよこの神文才野郎 (2017年2月9日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
【 】nanashi(プロフ) - 寄越せ。文才寄越せください。 (2017年2月7日 22時) (レス) id: 1572cb3dd0 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜のお外だいしゅきさん» 減るわやめろ (2017年2月7日 18時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
夜のお外だいしゅき - なぜだ。なぜくれない。いいだろう別に。お前の文才はちょっとやそっとじゃあ減らないだろう (2017年2月5日 21時) (レス) id: 2500df9be3 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜の空気を吸い隊さん» 名前に笑った、そして嫌だ (2017年2月5日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2017年1月31日 16時

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