貴「なあオロチ、俺達ってもう結婚してるも同然だよな。だから今日からお前天宮オロチな」ﾄﾞﾔｧｧ←オロチ「そうですかくたばれ。」【第三段】

子守唄 ページ31

宴が始まってから一時間程。


Aにも心地好く酔いが廻ってきた頃である。


ふぶき「あれ、A。その蝶なあに？」


A「え、蝶？」


ふと目をやると、それはそれは麗しい天色の蝶達が、Aの回りをくるくると舞っていた。


ヒカリ「きれーい」


蝶が撒き散らす鱗粉は、目映い程の光を放ちながらAの手に落ちて溶けた。


A「……なんだろうな？」


ふぶき「まあ、綺麗だし良いんじゃなあい？」


ヒカリ「ふぶき、酔ってるだろ！」


A「お前も大概だろ」


ほろ酔いのふぶき姫につられ、ついつい酒に手を伸ばすA。


甘く心地好い味が、喉を潤し、体に染み渡って行った。


時を同じくして、宴の場から少し離れた池の淵。


オロチは、廻ってきた酔いを醒ますため池の水で顔を洗っていた。


ぱしゃっ。
ぱしゃっ。


オロチ「……っ」


冷たい水が火傷の古傷に染み、オロチは顔をしかめた。


オロチ「……結局、俺はあいつから逃れられない運命なのだろうな」


あの時もそう、あれを助ける為に俺は命を投げ打った。


それにより顔の半分を侵した火傷の傷は、巡り巡って妖怪に生まれようと消えることは無かった。


あの時も、あの時も、自分が傷を負うのは全てあいつを庇うときのことだった。


また、近いうちに、あいつが危険に陥ることがあるのだろう。


水鏡に映る醜い傷痕を眺め、オロチは苦笑いした。


キュウビ「オロチ？そろそろ戻ったらどうだい、君がいないと色々つまらない」


オロチ「分かっている……おい、それはどういう意味だ」


「想像に任せるよ」とキュウビは笑い、ついと背を向けて賑わいの中に消えていった。


ゆっくり、後を追うオロチは、ふとある唄を口ずさむ。


…おどま盆ぎり盆ぎり…


…盆から先きゃおらんと…


ふぶき「A、それ何の唄？」


A「へっ？」


百鬼姫「唄っておったぞ、おどま盆ぎりと…」


ヒカリ「その唄知ってる！子守唄だよ、よく女郎蜘蛛さん唄ってくれたもん！」


唄っているつもりは無いのだが、無意識のうちに唄っていた様だ。


歌詞を思い出し再び唄ってみる。


おどま盆ぎり盆ぎり盆から先きゃおらんと…


盆が早よくりゃ早よもどる…


Aが唄うのに合わせヒカリオロチも唄う。


おどんが打っ死んだちゅうて( 私が死んだとて )…


だいが泣いてくりゅうか( 誰が泣いてくれようか )…


うちの松山蝉が泣く( 泣くのは精々 庭の蝉程度だろう )…

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