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儂は、
太郎に貰ったら名を使い、しばらくの間
人間の世界で医術を学ぶことにした。
それまでの妖たちの間で用いられていた医術は
人間にとって、埃を被っているほどに古臭いものだったらしい。
逆に、人間たちの間で用いられていた医術は
医療関係者以外の者たちを置き去りにし過ぎていた。
儂はどちらも満遍なく吸収し
使えるところだけを使えるよう、更に勉学に励んだ。
自身が満足し、タロウのもとへ帰る頃には
約十年もの月日が経っていた。
それでもタロウは温かく迎えてくれた。
新しい家族と共に。
．
．
．
トウリ「ほぉ、嫁をもろうたか」
太郎「あぁ、子供も授かった。もうじき産まれるだろう」
幸せそうに微笑むタロウの横顔を見て、儂は涙が出そうになった。
タロウの両親は早くに亡くし、ずっと一人で生きてきた哀しきモノだったからだ。
トウリ「儂は妖たちの医者になろうと思う。
弱き者も強き者も、天敵も仲間も関係なく平等に診てやれる医者に」
太郎「……そうか」
トウリ「だからもう、あまりこちらには来れなくなる」
太郎「…寂しくなるな。今日やっと、十年ぶりに再会したというのに」
トウリ「なぁに、必要になれば会えばいい。
風邪引いたら無償で治してやるぞ。タロウは儂の恩人だからな。
それに、鎌鼬の
面倒を見るのに忙しくなるさ。寂しいなど思えぬ程にな」
タロウと儂は、その先ほとんど会うことはなかった。
どちらも、それぞれに守るべき者が増え
忙しかったからな。
それでも幾度か、タロウの様子を見にきたよ。
影からこっそりとな。
娘が産まれておったな。
とてもやんちゃそうな子にみえた。
居候の鎌鼬とやらも見たが、溢れた才能を持ち、それでいて、柔らかな表情を浮かべる
なんとも不思議な者だった。
次に来た時は、タロウの娘が嫁に出る時だったな。タロウは泣いていたが、温かい笑みを浮かべておった。
そのまた次に来た時は、タロウが小さな女の子と遊んでおった。
すぐに分かったさ。
その女の子が、タロウの孫。
つまり、お前さんだということに。
その時は玄関に土産を置いていったよ。
そう、このケーキだ。
いずれにせよ、幸せそうだった。
タロウの家はいつでも陽だまりのように
落ち着きのある、温かで優しさに満ちておった。
満ちて、おった……
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作者名：じぇりー x他1人 | 作成日時：2015年3月6日 15時
