八十一話「気絶」 ページ43
紅葉side
私がモダモダしている間にも、眼下の竈門君がどんどん傷付いて行く。
だが、中々に糸の拘束を外せない。
動けば動くだけ、糸が肉に食い込んでいく。
炭「ガァ……ッ!!」
『ッ竈門君……!』
竈門君の必死の攻防も虚しく、累の頸に突き立てた刀はそこから通る事は無かった。
冗談抜きで金属音がした。
硬すぎるだろあの頸。
結果、そのまま竈門君は累に蹴り飛ばされてしまった。
当の累は軽く蹴ったつもりだろうが、竈門君の身体はいともやたすく吹き飛んで行った。
遠くに土煙が上がるのが見えた。
やはり強い。
これが十二鬼月の力……。
本当に、上弦の弐の時は相性が合って良かった。
でなければ今此処に私は立っていないだろう。
相性が悪いとはいえ下弦でもこれとは、先が思いやられる。
禰「むー!!むーぅ……ッ!!」
『ッ、禰豆子ちゃ…っ!そんなに動いちゃ……』
累「五月蝿いよ。
──少し黙って」
ビィンッと、糸が張る。
気付けば私は──悲鳴に近い咆哮を上げていた。
『ガアァアアッ!!』
同じく糸を張られた禰豆子ちゃんの悲鳴が、何処か遠くに聞こえていた。
痛い、痛い、痛い。
曲げられた片腕が、鈍い音を立てて曲がってはいけない方向に曲がった。
痛みに涙さえ浮かんでくる。
炭「やめろ──ッ!!」
辛うじて気絶しなかったらしい竈門君が、吠える。
累「お前の兄と旦那はもう僕だぞ。
いつまでも喚き立てるな」
禰「……ッ」
とうとう限界が来たのか、禰豆子ちゃんの首がカクリを下を向いた。
私の方もそろそろ限界が来そうだ。
度重なる出血と疲労。
そもそも私は鬼灯様の様にあまり痛みに強くない。
『ッ…』
到底千切れる気はしなかったが、せめてもの抵抗として禰豆子ちゃんを吊るす糸の一つに手を伸ばす。
千切れなくても良い、せめて緩めさえすれば──!
だが、そんな淡い期待も伸ばした手首がまたあらぬ方向に曲がったところで打ち砕かれた。
ゴキリ、嫌な音が響く。
『……あ"』
累「君結構丈夫何だね。
君なら気配が鬼じゃないし日の元に晒しても大丈夫そうだけど……僕のお嫁さんにそんな手荒な事はしたくないしね。
今は安らかに眠っててよ。
起きた時には、きっと全てが終わってるから」
クイッと、累の指が糸を動かす。
ペキョリと、中指が嫌な音を立てて折れたのを皮切りに視界がボヤけて来た。
まだだ。
まだ気絶しては駄目だ。
そう思っているのに、瞼が酷く重いのだ。
『……クソが』
その言葉を最後に、私の意識は闇に包まれた。
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ハルサ(プロフ) - 初めまして!読んで頂きありがとうございました!そうですね、まだ読まれてない方もいますし…私が浅はかでした、ありがとうございますm(_ _)m (2020年4月14日 17時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
mayumi(プロフ) - ハルサさん初めましてmayumiです。【鬼滅の刃】獄卒珍道中【弐】での息抜き読ませて貰いました!本誌の方・・・ネタバレにもなりますがまだおばみつが●んだという描写まだはっきりしていません!あまり読まれていない人もいるので控えた方がいいと思います。 (2020年4月14日 15時) (レス) id: cebdef8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年4月7日 13時