六十七話「疑念」 ページ29
紅葉side
とりあえず発狂する我妻君を落ち着かせ(手刀)、私は自分の部屋に戻った。
金棒の手入れは一旦中断し、ガラリと障子を開ける。
夜風が肌を撫で気持ちいい。
ただ何の用もなく外に出たわけでない。
少し、地獄に用事があるのだ。
竈門君達はもう寝た。
おばあさんにも必要な時以外は部屋に入らないという約束を取り付けたので多分大丈夫だろう。
『…木霊さん、通るよ』
スッと、眼下の地面を見つめる。
普通の人間が見てもそこはただの地面にしか見えないのだが、私には黒い穴が見える。
地獄への、道だ。
タンッと縁側の床板を蹴り、穴に飛び込む。
地獄に戻る方法は幾つか存在するが、今使っているこの方法が一番やりやすかったりする。
直通で地獄の閻魔庁に降りる事が出来るが、たまに某ト〇ロみたいに閻魔様の上に落ちたことがあるので使うには注意が必要なのだ。
トッと、閻魔庁の中華な床に降りる。
今回は普通に出来た。
地獄の閻魔庁に降りるのは久しぶりなので、周りの獄卒達がざわめく。
唐「く、紅葉様……!おかえりなさい」
ちょうど唐瓜君が来てたらしく、わたわたとお辞儀をされた。
『ん、ただいま。
鬼灯様も』
心做しか前より隈が濃くなった鬼灯様が、ゆっくりと顔を上げた。
鬼「おかえりなさい、紅葉さん。
どうしましたか、随分早いお帰りですね」
『…鬼灯様。
少し、お時間頂きますでしょうか?』
鬼「!…分かりました、この借りは返して貰いますからね」
『承知の上です』
◇◇◇
鬼灯side
ひとまず仕事を大王に押し付け…任せて、紅葉さんの部屋にお邪魔した。
最近会ってなかったが、随分憔悴している様に見える。
まず歩き方がおかしい。
腹部を庇う様に歩いている。
多分肋か何処かを傷付けているのだろう。
『…鬼灯様……』
それを皮切りに、彼女は話し始めた。
一緒にいて心地よい仲間達と出会った事。
─そして、救えたはずの命を奪ってしまった事。
猫のような金色の瞳が、ユルリと揺れる。
…前はこのように感情の起伏があった訳では無かった。
現世の人々の暖かさに触れた賜物、なのだろう。
部下であり妹である彼女の僅かだがはっきりとした成長を感じ取り、嬉しくなった。
まぁ、それを表に出す気は無いが。
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ハルサ(プロフ) - 初めまして!読んで頂きありがとうございました!そうですね、まだ読まれてない方もいますし…私が浅はかでした、ありがとうございますm(_ _)m (2020年4月14日 17時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
mayumi(プロフ) - ハルサさん初めましてmayumiです。【鬼滅の刃】獄卒珍道中【弐】での息抜き読ませて貰いました!本誌の方・・・ネタバレにもなりますがまだおばみつが●んだという描写まだはっきりしていません!あまり読まれていない人もいるので控えた方がいいと思います。 (2020年4月14日 15時) (レス) id: cebdef8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年4月7日 13時