六十話「雷公の一閃」 ページ21
紅葉side
『は……ッ?』
思わず唖然とする。
私はまだ腕をピタリとも動かしてない。
正一君はそもそも刃物を持っていない。
ならば……。
ヌロリと、斜め後ろの我妻君が起き上がった気配がした。
雷公の、気配だ。
『我妻、君…?』
善「……紅葉ちゃんは下がって、正一君を守ってくれ」
それだけ。
ただ一言呟いたっきり我妻君は一言も発さなくなった。
まるで別人格が宿ったかと錯覚する程、普段の彼とは程遠かった。
だけど、気配は我妻君のそれだ。
確かに舌は彼の手が届くところに伸びた。
だけど寝たまま抜刀なんて、そんな荒業…。
とりあえず戦ってはくれそうなので、言われた通り下がって正一君の前に立った。
ザリ、と彼の後ろ足が畳を擦った。
──居合の、ポーズだ。
「しぃいぃい」という、謎の呼吸音の様な物が異様な空気を揺らす。
何処かでパチパチという静電気の様な音が聞こえた気がした。
心做しか、我妻君の周りが雷を纏っているように見えた。
善「──雷の呼吸壱の型─霹靂一閃」
───一瞬の、出来事だった。
キラリと彼の金糸が輝いたかと思えば、鬼の頸はゴロゴロと地面を転がっていた。
私でも捉えたか捉えられない程の早業。
──まさに、霹靂一閃。
ぶわりと、髪が逆立ちパチパチと音を立てる。
嗚呼──酷く綺麗だ。
彼の刀がチキリと音を立て鞘に収められ、それと同時に頸から上が無くなった胴体が血飛沫を上げる。
…というか彼……寝てたよな?
え、どゆこと?
困惑しているとそこから直立不動だった我妻君の方から「んがっ」という声と何かが弾ける音がした。
……んが?
ゴロゴロと、物言わぬ生首が我妻君の足元に転がっていく。
だんだんと塵と化していくそれを見て彼は──悲鳴をあげた。
善「ギャーーッ!死んでるゥ!!急に死んでるよ、何これ?!もうやだぁ!!」
あ、何時の我妻君だ←
ずっと「何これ何これ」と連呼してた我妻君の視線がふとこちらに向いた。
善「紅葉ちゃん…正一君……?ま、まさか…」
…………。
…ゑ?
『うぉっ』
唐突に結構速いスピードで、私と正一君に縋り付いて来た。
傷は痛まないから配慮はしてくれているようだ。
善「ありがとぉー!助かったよー!この恩は忘れないよー!そんなに強いなら最初から言ってよぉお!!いや紅葉ちゃんは元から強い音してたけどねぇぇ!」
…どういうこっちゃ?
『我妻君…君があの鬼の頸切ったんでしょ?』
善「??ついに頭おかしくなった紅葉ちゃん?」
『おい』
六十一話「突然の外」→←五十九話「中の人のネタは古く、善逸は眠る」
53人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハルサ(プロフ) - 初めまして!読んで頂きありがとうございました!そうですね、まだ読まれてない方もいますし…私が浅はかでした、ありがとうございますm(_ _)m (2020年4月14日 17時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
mayumi(プロフ) - ハルサさん初めましてmayumiです。【鬼滅の刃】獄卒珍道中【弐】での息抜き読ませて貰いました!本誌の方・・・ネタバレにもなりますがまだおばみつが●んだという描写まだはっきりしていません!あまり読まれていない人もいるので控えた方がいいと思います。 (2020年4月14日 15時) (レス) id: cebdef8e2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハルサ | 作成日時:2020年4月7日 13時