月夜の逃走劇。 ページ38
side無し
そして。
響｢逃げよう、姉ちゃん｣
二人の運命が決まる日が来た。
鏡花のボロボロの手を固く握り締め、響はそう告げた。
もう、迷いは無かった。
『……どうして？』
響｢俺が姉ちゃんと生きたいから｣
『……！』
響の瞳に宿る意思は、酷く固かった。
そう、ただ大切な姉と一緒にいたいから。
これが響の異常なまでの執着心の正体だった。
だって、お互いそれしか"拠り所"が無かったんだから。
だから、この地獄のような場所から鏡花と共に逃げ出す事を選んだ。
まだ見ぬ世界へ、愛しい姉と共に飛び込んで見たかった。
響にとって、姉がいない世界など信じられなかった。
ある月夜の日、二人の姉弟は地獄から逃げ出した。
それが誰の為の選択なのか、今となっちゃ誰も分からない。
けれど、悲劇の少女はこの時────確かに救われたのだ。
image:http://uranai.nosv.org/uploader/common/b/e/1/be1195cadb00670310c9299c6a218279.jpg
響｢なぁ姉ちゃん、無事に逃げれたら何がしたい？｣
『したい…事？
そうだなぁ…………──君と一緒に居られるのなら、後は何も要らない』
響｢…………！｣
浅葱色の瞳が、大きく見開かれる
鏡花には響しかいなかった。
逆に、響にも鏡花しかいなかった
傍から見たら共依存を極めた姿。
しかし確かに【愛情】だった。
誰の介入も許さない、何処までも続く青空のような澄んだ愛情。
手を繋ぎ合い、野を何処までも駆け、鏡花はまだ見ぬ暖かい未来を熱望するように楽しげな笑みを浮かべた。
『でもね、強いて言うなら金平糖を食べたい』
響｢……それはなんで？｣
不意に、横の鏡花の顔に仄暗く影が堕ちる。
まずい、と響が悟る前に鏡花の口が開かれる。
『あのね、我慢すると金平糖が貰えたんだ』
響｢…………。｣
何を、とは聞けない。
自分がまだほんの幼子だった頃、身を裂かれるような悲鳴が時たま暗闇に響いていた事を響は覚えていた。
『栄養のある食べ物ってそれくらいしか、無かったから。
……だからね、今度はそんな口封じじゃなくて……響と一緒に、金平糖を食べたい。
街の駄菓子屋で買って、椅子に座って、食べたい』
……それが私の、密かな夢なんだ。
鏡花はそう語った。
響｢……きっと叶うよ｣
『！』
響｢だって、俺と姉ちゃんがいるから｣
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ルカ(プロフ) - りあてゃんさん» コメントありがとうございます！てぇてぇ姉弟…。響くんは圧倒的に鏡花ちゃん子なのに使用人と親共に未来は無い(殺意) (2021年2月23日 10時) (
レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
りあてゃん - んあ”ぁぁぁ.....響くん良い子！鏡花ちゃんに似てめっちゃ良い子！！もう使用人とか親とかは全力で滅んでくれ、お前らは二人の幸せを邪魔する存在でしかない(( (2021年2月21日 11時) (レス) id: 15f52de452 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！この家はクソ野郎しかいない……(おい)いつもありがとうございます！ (2021年2月17日 22時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 立場を利用してキョウカをいじめる使用人が何よりもムカつきます。旦那サマがやってることは決して良いことではないけど、使用人のやってることはそれ以前に卑怯だと思うんです。 (2021年2月17日 18時) (レス) id: 7c7117969d (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - あなたさん» ありがとうございます！お待たせしてすみません！これからも読んでくれると嬉しいです！！ (2021年2月17日 7時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルカ | 作成日時：2021年1月31日 23時
