君と出会って、 ページ28
side無し
『……ねぇ、今、なんて言ったの?』
響「?"姉ちゃん"って言ったよ?……なんか変な事言ったか?」
何の気なしに言い切る響に、思わず思考が停止する。
今日の夜はあやとりをしていた。
半月に照らされ、僅かな会話を交わしながら黙々と、しかし楽しげに。
気付けば────響と出会ってかなりの年月が経過していた。
今やもう響は言葉を喋れるし、意思の疎通も出来る。
だからこそ、何でもないように言い切られたその呼び方に酷く動揺したのだ。
何か特別な手順を踏んだ訳でもなく、ただただ日常の一片のように。
不思議そうに首を傾げる響。
首を傾げながら、さも不思議そうに太い眉を下げるのは響の癖だった。
あやとりを両手で組んだまま、目を見開き身体の動きを停止させる。
『……いや、何でも無い。
続けて』
パチ、と弾けるようにして再起する。
こちらを心配そうに見つめてくる浅葱色の瞳が、何もかも見透かしてくるような気がして。
ふっと目を伏せ、視線を逸らす。
何だか居心地が悪いような気がする。
─────ヌ、と不意に影が差す。
響「"姉ちゃん"」
『……!』
眼前に迫る響に、思わずギュッと反射的に目を瞑る。
しかし、殴られるでも叩かれるでも無く───長い前髪を掻き上げられ、露わになった傷だらけの額にひんやりとした小さな手が当てられた。
響「熱は無いけど……やっぱ体調悪いんじゃないか?」
パチ、と瞳を瞬かせる。
久しぶりに前髪を退かした為、何だか辺りが明るい気がする。
『だい、じょうぶ……だけど』
響「そうか?なら良いけど……」
やや挙動不審になりながらも、響から離れる。
それでもやはり心配しているのか、視線が酷く痛かった。
……集中出来ない。
さっきまで没頭していたのに、今はまるで逆だ
寧ろ鏡花の方が響に注目しているまでもある。
なら、今度はこちらから仕掛けてみようか。
『……ねぇ、響』
響「ん?なぁに姉ちゃ……ん?!」
ギュッ
上体を伸び上がらせ、上から覆い被さるように最近己より大きくなってきた身体を抱き締める。
流石に予想外だったのか、ビクリと揺れる身体。
響「ね、姉ちゃん…?!ちょ、これは流石に恥ずかし……『響』!」
『ありがとう』
僅かな沈黙の末、響の口が開かれる。
ふ、と綻ぶような笑い声が零れる。
響「姉ちゃんが嬉しいなら……俺も嬉しいよ」
嗚呼、愛おしい。
口元が綻ぶ。
この日、鏡花は静かにこの子を全力で護ると誓った。
例え、この身が滅びようとも。
────響が生きるのなら、私は死んでも構わない。
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ルカ(プロフ) - りあてゃんさん» コメントありがとうございます!てぇてぇ姉弟…。響くんは圧倒的に鏡花ちゃん子なのに使用人と親共に未来は無い(殺意) (2021年2月23日 10時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
りあてゃん - んあ”ぁぁぁ.....響くん良い子!鏡花ちゃんに似てめっちゃ良い子!!もう使用人とか親とかは全力で滅んでくれ、お前らは二人の幸せを邪魔する存在でしかない(( (2021年2月21日 11時) (レス) id: 15f52de452 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!この家はクソ野郎しかいない……(おい)いつもありがとうございます! (2021年2月17日 22時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 立場を利用してキョウカをいじめる使用人が何よりもムカつきます。旦那サマがやってることは決して良いことではないけど、使用人のやってることはそれ以前に卑怯だと思うんです。 (2021年2月17日 18時) (レス) id: 7c7117969d (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - あなたさん» ありがとうございます!お待たせしてすみません!これからも読んでくれると嬉しいです!! (2021年2月17日 7時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルカ | 作成日時:2021年1月31日 23時