これが彼女の日常。 ページ15
side無し
ぐ、と情け容赦無く小さな頭に体重を掛けていく。
まだ幼い身体、成人男性の体重に耐えられる筈無かった。
助けを求めるように畳をガリガリと引っ掻いていた小さな手は、そのうち痙攣しかしなくなった。
スターンッ!!と勢いよく外へ続く障子が開かれる。
外はどんよりと重い曇天だった。
ずるりずるり、と抵抗すらしなくなった鏡花の襟首を掴み、開け放たれた障子の方へと引き摺っていく。
そして──徐に、鏡花を庭の方へ投げ飛ばした。
『ァ、う……!!』
カッ!と半目になっていた瞳が耐え難い激痛と衝撃により大きく見開かれる。
数度地面をバウンドし、一際大きな木にぶつかって止まった。
あっという間に土埃に塗れる小さな身体。
けひゅ、けひゅ、と小さな咳が響いた。
頭がボーッとする。
視界が霞む。
龍「チッ、汚ぇなぁ……」
自分がやったといういうのに、まるで汚物を見るような目で己の実の娘を見下ろす龍次郎。
一回ガッ、と腹を蹴った後鏡花を置き去りに縁側に登る。
龍「しばらくそこで反省してろ」
クズが。
そう吐き捨て、無常にも障子は閉じられた。
庭には、手酷く踏まれそして投げ飛ばされた鏡花だけが残された。
きゅう、とまだ傷も何も無い柔らかな自身の手を握り締める。
『……寒い、なぁ』
季節は秋。
小学校に上がれる年齢とはいえ、永続的に続く栄養失調のせいで彼女の免疫力は酷く弱かった。
ギュ、と己の膝を握り込む。
普通の人間が見れば、これは異常だと宣うだろう。
そしてボロボロの鏡花を両親から引き剥がし、まるで化け物を見るような目で糾弾するだろう。
しかし、鏡花にとってはこれが日常だった。
ご飯を与えられなくて雑草を食むのも、
ようやく与えられたと思ったら、わざと頭にかけられるのも、
折られた骨が変な方向に固まり、そして動かなくなったのも
腹を踏まれ、胃液しか吐き出さなくても、
酒瓶で頭を殴られるのも、
化け物と罵られるのも、
これが、彼女の"普通"だったのだ。
他人の異常は己の正常。
生まれてこの方虐待され、外にも出して貰えなかった鏡花はこの大きくも狭い屋敷しか知らなかったのだ。
だから、己の家族の異常性すらも分からなかった。
即ち───これが彼女の日常だったのだ。
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ルカ(プロフ) - りあてゃんさん» コメントありがとうございます!てぇてぇ姉弟…。響くんは圧倒的に鏡花ちゃん子なのに使用人と親共に未来は無い(殺意) (2021年2月23日 10時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
りあてゃん - んあ”ぁぁぁ.....響くん良い子!鏡花ちゃんに似てめっちゃ良い子!!もう使用人とか親とかは全力で滅んでくれ、お前らは二人の幸せを邪魔する存在でしかない(( (2021年2月21日 11時) (レス) id: 15f52de452 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!この家はクソ野郎しかいない……(おい)いつもありがとうございます! (2021年2月17日 22時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 立場を利用してキョウカをいじめる使用人が何よりもムカつきます。旦那サマがやってることは決して良いことではないけど、使用人のやってることはそれ以前に卑怯だと思うんです。 (2021年2月17日 18時) (レス) id: 7c7117969d (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - あなたさん» ありがとうございます!お待たせしてすみません!これからも読んでくれると嬉しいです!! (2021年2月17日 7時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルカ | 作成日時:2021年1月31日 23時