夜柱の生まれ育った家。 ページ13
side無し
暁鏡花は、大きな街に居を構えている裕福な呉服屋の一人娘として生を受けた。
両親は優しいし、近所の人もとても暖かい。
生まれた時から裕福な暮らしが約束されていた彼女は、傍から見れば酷く幸せに見えるだろう。
母京子と、父龍次郎の仲睦まじい幸せな家族。
だが──それは、間違い以外の何者でも無かった。
モブ女1「いやぁ、ここの着物はいつも上質で着やすくて良いねぇ!」
龍「いやいや、恐縮でございます!」
モブ女2「あたしもあたしも!今度奮発して買ってみようかなぁ」
京「ありがとうございます!」
モブ1「…そういや、ここの店子供を見たことが無いねぇ。
あんたらもいい歳だろうし、子供一人くらいこさえたらどうだい?まぁ無理強いはしないけどね、事情もあるだろうし」
ピク、と二人の眉が動く。
買いに来た女性は善意で言ったつもりなのだろう。
しかし、それが二人の歪んだ出世欲に火を付けるとは一体誰が予測出来たのだろうか。
モブ男1「そういやこの店、"跡継ぎ"がいないって聞いたなぁ」
モブ3「あらぁそうなの?大きい店なのに勿体ないわねぇ」
わいわい、がやがや。
いつも賑わう呉服屋のご夫婦は、にこにこ笑顔の善人達。
だが、それは全くの間違いだった。
不意に、跡継ぎの話を振った男が何かに気付いたように片眉をあげる。
先程まで満足そうに細められていた二人の瞳が───確かに、邪悪な気配を孕んでいた気がしたのだ。
しかし、この人達に限ってそれは有り得ない。
と、男性はすぐにその思考を掻き消した。
呉服屋は閉店時間まで賑わい、そして閉店した。
いつも通りの日常。
しかし──人の本性とは分からぬものだ。
最後のお客を見送った夫婦は───今日の事を楽しげに話し合う訳でも無く──チッ、と両者面倒くさそうに舌打ちをした。
人が居なくなった瞬間これである。
閑話休題
どっかり、自室の座布団に気だるげに腰を降ろした龍次郎。
ぎょろぎょろ、と淡い青をした瞳が苛立たしげに辺りを探る。
どうやら何かを探しているようだ。
しかし、目的の人物は見つからなかったらしい。
チッ、と乱暴に舌打ちを叩き付け───ガシャンッ!!と酒瓶をこれまた乱暴に床に置いた。
龍「おいグズ野郎!!酒持ってこい酒ェ!!」
鶴の模様が彫られた雅な襖に向かって怒鳴る。
日中の彼とは大違いである。
数秒程経ち、不意に襖が開かれ──現れたのは、小学生低学年程の小さな少女であった。
『お、お酒をお持ちしました……』
はっきり言おう。
鏡花のかつての家族は────最悪だった。
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ルカ(プロフ) - りあてゃんさん» コメントありがとうございます!てぇてぇ姉弟…。響くんは圧倒的に鏡花ちゃん子なのに使用人と親共に未来は無い(殺意) (2021年2月23日 10時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
りあてゃん - んあ”ぁぁぁ.....響くん良い子!鏡花ちゃんに似てめっちゃ良い子!!もう使用人とか親とかは全力で滅んでくれ、お前らは二人の幸せを邪魔する存在でしかない(( (2021年2月21日 11時) (レス) id: 15f52de452 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!この家はクソ野郎しかいない……(おい)いつもありがとうございます! (2021年2月17日 22時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 立場を利用してキョウカをいじめる使用人が何よりもムカつきます。旦那サマがやってることは決して良いことではないけど、使用人のやってることはそれ以前に卑怯だと思うんです。 (2021年2月17日 18時) (レス) id: 7c7117969d (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - あなたさん» ありがとうございます!お待たせしてすみません!これからも読んでくれると嬉しいです!! (2021年2月17日 7時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルカ | 作成日時:2021年1月31日 23時