【鬼滅の刃×twst】僕に近付かないでおくれ。伍【過去編】

一人の少女の物語。 ページ12

side無し

鬼殺隊 夜柱 暁鏡花は優しすぎる。

と言えば、その人物を知る過半数はしみじみと頷くだろう。
実力は鬼殺隊の最強、悲鳴嶼行冥に次ぐ強さを持つが、その癖どこか精神は脆いという不思議な人物。
眉目秀麗、文武両道。

実力が全ての鬼殺隊で、彼女を慕う者は多い。

夜の呼吸というかなり珍しい呼吸を使う彼女は、いつしかその実力で柱にまでのし上がっていた。
曲者揃いの柱の中では比較的常識人の部類に入るが、その割には水柱と一緒に風柱におはぎをプレゼントしに行って仲良く地面に足だけ出して埋められていたりと妙ちくりんな噂は絶えない。

ある紫の蝶は言う。

｢あの人の優しさは、姉さんに似ていて……まるで甘い毒のように、私をゆっくりと溶かして行くんです｣

ある桜餅は言う。

｢とっても可愛い女の子よ！私が頭を撫でたら、照れながらも凄く喜んでくれるの！｣

ある凪は言う。

｢……(あいつは蔦子姉さんに似て、とても)優しい｣

ある忍びは言う。

｢あいつ気付いたら背後にいるんだよな……俺だって忍びだっつーのに。
だが……あいつ顔も整ってるからな、ありゃあ化粧したら派手に化けるぞ！｣

ある霞の少年は言う。

｢…僕はすぐに忘れてしまうけど……あの人に頭を撫でられる感覚だけは、鮮明に覚えてるんだ。
何でだろう、不思議だね｣

ある暴風は言う。

｢何も言うことなんざねェよ。
まァ……強いて言うなら、他人の為に命を賭けられる優しくも危なっかしい奴｣

ある白蛇は言う。

｢……ふん、他人ばかり気にするならまず自分の事を気にしたらどうだ。
仮にも柱だ、大きな怪我はするものでは無い｣

ある岩の僧は言う。

｢とても優しく、そしてとても愛おしい子供だ……寺の子供達を思い出す……南無阿弥陀仏…｣

いつも優しく、時に厳しい鬼殺隊の夜柱。
さて、今宵語るはそんな彼女の悲劇に塗れた過去話。
幼子の頃から辛い生活を強いられて来た彼女の花緑青の瞳には、一体何が写っているのだろうか。

NRC問わず、この世界全体に女性を尊ぶ習慣は広がっている。

だが、そんな中で女性でありながら男装している彼女はどうなる？
答えは簡単、男子校の華に等しい一人の女子生徒の当て馬にされる。
何で悲しく、切ない物語であろうか。
彼女は漸く死ねたというのに。


それでも、語らねばならないだろう。

彼女の過去を。

そして、彼女の背中を押した暖かい者達の行く末を。

夜柱の生まれ育った家。→←鬼狩り物語、これより開幕。

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