災厄の化け物の気配。 ページ14
夢主side
幸せが壊れる時というのは、いつも一瞬だ。
ある日の、少しどんよりとした曇り空の日だった。
今日も学校がある為、いつものように訪れる妖精と談笑をしていた。
──そんな平和が、一瞬で崩れた。
『─────、』
バリンッ
彼らから貰った花を活けようとした花瓶が、唐突に力の抜かれた手から滑り落ちた。
足元に散乱する水と硝子の破片など気にも留めず──私の意識は真っ直ぐその事象に向いていた。
妖精1「どうしたの?」
妖精2「花瓶が落ちちゃったよ?」
妖精達の声が、どこか遠くに聞こえる。
それもそのはず──私は、この気配に見覚えがあった。
ざりざりと弱いところをヤスリで擦られるような、到底受け入れられない忌避感。
私の鬼狩り人生が齎した、人並み外れた感覚がそのおぞましい化け物の気配を正確に捉えてしまっていた。
──口元を血で汚し、ぐちゃぐちゃと人肉を貪る忌避すべき化け物。
ドッ、と少し遅れて冷や汗が溢れ出る。
はくはくと口元が空気を求める魚のように揺れ、ぞわぞわと拭い切れない寒気が背中をまさぐった。
───お母ちゃん!死なないで!!
───置いていかないで、貴方…!
────胸を張って生きろ
───嗚呼、そうかい。
あの地獄から抜け出した私に、まだ苦しんで欲しいかい。
『……っ、』
ギリ、と歯を噛み締める。
気付けば私は、妖精達を置き去りに走り出していた。
妖精1・妖精2「「キョウカ?!」」
あの手合わせと同じ……それ以上に多量の酸素を肺の中に満たしていく。
息を吸いすぎて少し胸が痛くなる……嗚呼、あの頃と何ら変わりない。
頭がガンガンするような緊張感や、どくどくと脈打つ心臓もあの頃のままだ。
『コオォオオ……!!』
激しい呼吸音が口から漏れ、白い蒸気が伸びていく。
嗚呼、久しい。
この世界に来てからほとんど使わなかった呼吸が、今は身近にある。
向かう先は無論校舎。
そこに──鬼がいる!!
人が怖いなどとは言ってられない。
私がまごつく間に、何人もの命が犠牲になるか。
私が、やらなければならない。
それが───この私、暁鏡花の使命だ!!!!
瞬足で校舎に繋がる鏡を通り、床を踏み割る勢いで廊下を一直線に駆けていく。
そして、食堂に着き標的を視認した刹那──どくどくと脈打つ鼓動を抑え込むように、静かに抜刀した。
『夜の呼吸 壱の型──』
一切の乱れのない、月下の水面のように。
『明鏡止水』
233人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルカ(プロフ) - 結色緋月@ラムネちゃんセコムさん» 許可ありがとうございます! (2021年1月6日 12時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
結色緋月@ラムネちゃんセコム(プロフ) - 遅くなりました...!素敵と言って貰えて嬉しいです( ´艸`)イラスト載せて全然大丈夫です!これからも頑張ってください!応援してます(*´∀`) (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1c54a3263e (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - 結色緋月@ラムネちゃんセコムさん» 凄い素敵です……!!ありがとうございます、めちゃくちゃ嬉しいです!!(*´ω`*)それで一つ質問何ですが、イラスト紹介の際乗せても大丈夫ですかね…? (2021年1月6日 8時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
結色緋月@ラムネちゃんセコム(プロフ) - ルカさん» https://drive.google.com/file/d/1MesneprGFg0OXTbRrHQrkmoDjke1r5MZ/view?usp=drivesdk 描けました...!Googleドライブに入るので多分ダウンロードも出来ると思います!小6クオリティなのでめちゃ下手ですがお許しください<(_ _)>〈 ゴン!〕 (2021年1月4日 15時) (レス) id: 1c54a3263e (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - 結色緋月@ラムネちゃんセコムさん» ィェ((・ω・*≡*・ω・))ィェ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルカ | 作成日時:2020年12月20日 16時