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side無し
ビチャリと、赤が呆然とする彼岸の鼻先に付着した。
オ「……ユ、ウさん?」
イ「……うそ」
二人の同じ色の瞳が、限界まで見開かれる。
オルトの優れた機械性能が、ユウの出血量が命に関わる物と……確かに示していたのだ。
一瞬間を置いて、彼岸の身体が縮んでいく。
大きかった身体は元のサイズへと戻り、焼け跡だらけだった焦げ付いた毛はシュルシュルと逆再生のように肌へと戻っていく。
しかし……今までの怪我が治った訳ではない。
元の火傷とは別の、真新しい火傷、無数の裂傷、最早正常な部分を見つける事すら難しい血に濡れた白い肌。
いつも無表情な姿……人間の姿に戻っていた。
あまりにも酷い怪我に、彼女を疎んできた者、尊敬してきた者問わずヒュッと喉から掠れた音を鳴らす。
『ユ、ウさん…………?』
ド、と膝をついた彼岸が目を限界まで見開き緩慢な動きで血をダラダラと流したまま立ち尽くすユウへと手を伸ばした。
朦朧と……しかし意識があるらしい彼女はゆっくりと振り返り、彼岸に向けてにっこりと微笑んだ。
ユ「彼岸さん、私、守れましたか?生まれてからずっといらない子だと言われてきたこんな私でも……誰かの役に立つ事が出来ましたか?
ほら、笑ってください。
……貴方は、笑った顔の方がずっとずっと、可愛らしいんです」
『……っ』
彼岸の脳裏に、いつか彼女に言った言葉が思い浮かぶ。
───ほら、むにっと。
貴方は、笑った顔の方が可愛いと私は思いますがね。
……辛気臭くたって良いんです、ちゃんと笑えば全部パーですから。
ポタリ、ポタリと雫が零れ落ちる。
……それは、ユウの涙だった。
今までにないくらい、幸せそうな笑顔で、何かをやりきったような顔で、静かに涙を流していた。
ユ「……ちゃんと守れたよ、"お兄ちゃん"」
その言葉を最後に、力の抜けた身体が前のめりに倒れ込む。
それを彼岸が間一髪で受け止めた。
『……っ!ユウさん、大丈夫です、か……』
黒の瞳が、僅かに見開かれる。
ユウの背中に触れた彼岸の手には、確かにヌルリと赤色が糸を引いていたのだ。
……何で、皆私の大切な者を奪おうとするんですか?私が、何をして……。
……あぁ、そうですか。
ザワり、と黒い霧らしき物が二人の周囲を黒く埋め尽くす。
『……これからは、私が奪う番です』
───パキンッと、半分程黒に染まった夕焼け色の勾玉が確かに、弾け飛んだ。
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ハルサ(プロフ) - 碓氷時雨さん» (・ω・(ヾ)YES!(ストーブの前で書き書き) (2020年11月4日 21時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
碓氷時雨(プロフ) - うっす!(`・ω・´)ゝ(布団の中待機なう) (2020年11月4日 2時) (レス) id: 49e22a6e0b (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - 碓氷時雨さん» ありがとうございます!ですが最近冷え込んで来たので、暖めるのを忘れずに……!ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ (2020年11月3日 21時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
碓氷時雨(プロフ) - マジっすか!全裸待機してますね!)))) (2020年11月3日 19時) (レス) id: 49e22a6e0b (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - 碓氷時雨さん» ( °ω° ;)=( ;°ω° )イエイエイエ!!(高速首振り)全然大丈夫なんですが、なんかすいませんこちらこそ……とりあえず、近いうちに制作予定なのでよろしくお願いします(´・ω・`) (2020年11月3日 15時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年10月18日 12時