静かな雫 ページ16
ユウside
ピクリと、図星をつかれたように獣が反応する。
ポタ、ポタリと頬に滴る水滴の感覚に思わず瞳をぱちぱちと瞬かせる。
……彼岸さんらしき獣は、静かに泣いていた。
耐えるように、何かを懺悔するように。
『グル、ルゥ……』
──一人にしないでと、縋るように。
ユ「……大丈夫」
力の弱まった隙に抜いた右腕を上げ、彼女?の火傷に当たる部分を優しく撫ぜた。
ずず、と両腕を抑えた両足が退く。
血が止まっていた為、一気に熱が戻ってくる。
ビリビリとした痛みが走る両腕を摩りつつ、壁に背中を預けた私はそのまま獣……彼岸さんの頭を優しく抱き締めた。
ユ「一人になりたくないのは、私も同じですから」
人間の姿と同じ黒曜石の様な瞳が、僅かに見開かれる。
『──!』
……ふと、ググ、と抱き締めていた感覚が小さくなった。
ユ「!」
そのまましゅるしゅると縮んでいき、最終的には車の大きさから大型バイクくらいの大きさになった。
じ、と静かに見つめられる。
ユ「…もしかして、サイズを調整してくれたんですか?」
グルゥ、と喉が鳴る。
私には、何となくそれが肯定に聞こえたのだ。
ほんの少し照れ臭そうに、そっぽを向いて。
ユ「…ありがとうございます、彼岸さん」
返事の代わりにふさふさの尻尾がわさわさと揺れた。
……さて、まずは。
ユ「傷、見せて下さい!」
『グルッ?!』
いざと言うとき彼岸さんから貰った簡易の救急キットがある……!
長い毛をゴソゴソと掻き分け、めぼしい箇所に薬を塗っていく。
薄暗くて体毛も赤かったからあまり気付かなかったけど、結構あちこち怪我をしていた。
ほとんど直接的な傷では無く、身体の内側がダメージを受けているような……そんな感じだった。
とりあえず応急処置は終わった。
血で身体がベットベトになったけど、彼岸さんが舐めてくれた。
ユ「……彼岸さん、ここがどこだか分かります?」
とりあえずは小屋の外を出て、辺りを見渡してみた。
全く見覚えのない、深い森の中。
さっきまで寝ていた小屋は、今はもう使われていないらしく所々が壊れていた。
『……グル』
どうやら、彼岸さんが私を連れてきたらしい。
あの場所から引き剥がす為なのか、それとも……。
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ハルサ(プロフ) - 碓氷時雨さん» (・ω・(ヾ)YES!(ストーブの前で書き書き) (2020年11月4日 21時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
碓氷時雨(プロフ) - うっす!(`・ω・´)ゝ(布団の中待機なう) (2020年11月4日 2時) (レス) id: 49e22a6e0b (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - 碓氷時雨さん» ありがとうございます!ですが最近冷え込んで来たので、暖めるのを忘れずに……!ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ (2020年11月3日 21時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
碓氷時雨(プロフ) - マジっすか!全裸待機してますね!)))) (2020年11月3日 19時) (レス) id: 49e22a6e0b (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - 碓氷時雨さん» ( °ω° ;)=( ;°ω° )イエイエイエ!!(高速首振り)全然大丈夫なんですが、なんかすいませんこちらこそ……とりあえず、近いうちに制作予定なのでよろしくお願いします(´・ω・`) (2020年11月3日 15時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年10月18日 12時