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「雹隊の十五班ってさ」
ドアに手をかけて、開けようとしたその動きが止まった。
「強いし実力があるのは分かるけど、よく戦力外通告されないよな」
……最近、よく聞く話だ。
「今度の現場にも出ないだろ？ 普通、班から一人も出ないとなると隊長からの戦力外通告があってもおかしくないのに」
「言いたいことは分かるよ。個人的には十五班は好きだけど、班長は嫌ってる。その気持ちも分からないことはないから」
唇を噛んだ相葉。
ドアから手を離して、部屋から出ることを諦めた。
松葉杖に体重をかけ、頭を壁にコツンとぶつける。
「何でお前、十五班のこと好きなんだよ」
「班長と班員の関係に憧れるだろ。あんな班長だったらいいのに」
「あんな班長って……大野みたいな？ やめとけよ、小柄でひょろっちい班長なんてお断りだね」
「バカにすんなよ、大野さんはあれでも特殊戦闘員なんだからな。お前より強いんだぞ」
「あれで？ 信じられないね。何も喋らないし、ずっと猫背で」
「現場の大野さん見たことないのかよ、あれは別人だぞ？」
「本当に別人なんじゃねえの？」
思わず苦笑する相葉。
大野のことを尊敬しているのは言葉から分かった。
嫌味を言う人もいれば、こうやって擁護してくれる人もいる。
両極端なのだ。
「いいや。俺は大野さんが霰隊にいた時から知ってる。あの頃とは雰囲気が変わったけど、あの戦い方は大野さんだよ。戦い方は変わってない」
「何でそう言えるんだよ」
「前の現場で大野さんを見かけた。変わってたけど、変わってなかった」
ドアから離れた相葉。
また、元いたベッドに戻る。
「変わってたけど変わってなかった、か」
聞いた言葉をそのまま繰り返す。
聞いた感じだと、霰隊にいたときの知り合いだったらしい。
声だけでは誰かまでは分からなかったが、そのぐらいは想像がつく。
あの話し方だと、今も霰隊所属なのだろう。
「確かに、霰隊のときの大ちゃんだけを知ってる人が今の大ちゃんを見たら、変わったって思うだろうな」
大野も、あの事故のあとで変わった。
みんな、変わったのだ。
でも、霰隊の仲間はきっとそのことを知らない。
あの事故は隠蔽された。
知っているのは、当時現場に出た隊員たちと雹隊と霰隊の隊長、そして現在の雹隊の班長たちだけだった。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
