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コーヒーを淹れて、ソファに並んで座る。
何か考え込んでいるらしい大野。
ふー、と息を吹きかけながら揺れるコーヒーを眺めていた。
「大野くん」
「ん？」
「あんまりやると冷めるよ」
「冷めてもいいの」
手に持ったまま動かない大野を見て、思わず笑う。
「冷めたコーヒー美味しくないでしょ」
「別にコーヒーに美味しさは求めてないもん」
「え、何を求めてるのよ」
「眠気覚まし」
「覚まさないで寝ていいから」
えー、と笑っている。
ピ、と音が鳴って部屋のドアが開いた。
立っていたのは二宮と松本。
「ちょっと、アレ何ですか？」
二宮が廊下を顎で指す。
アレ、とは倒れている長田と酒田のことだろう。
「襲ってきたから返り討ちにしてやった」
「また？ 懲りないねえこの人たちも」
呆れた顔で廊下を見やる。
松本も似たような表情だ。
「このままにしといて、何も言われないかな」
「知らない、この部屋の前だから何があったのかは察するでしょ」
「それはそうだけど」
結局、そのまま放置して部屋に入ってきた二人。
「後で報告しに行く。翔くんに手出した」
「は？ 翔さんに？」
目を丸くした松本。
二宮は顔をしかめた。
「ありえない。非戦闘員に手出すのは辞めさせてもいいぐらいなんだけど」
「まあね。まあ良くても雹隊からの除名処分ぐらいしか望めないけどさ。お咎めなしかもしれないし」
ずずっとコーヒーを飲んでいる大野。
二宮にとっては他人事ではない。
「一部の隊員の、この過激な行動どうにかならないんですかね」
「仕方ないよ。向こうからしてみれば俺らが目障りなんだろうし」
ただの僻みなんだから、と大野はどこか諦めている。
「……大野さん、右腕どうかした？」
「え？ 何で？」
「翔さんが気にしてるから」
顔をしかめて櫻井を見た大野。
心配をかけたくないから、言おうとしていなかったのに。
「翔くん」
「ごめん。でも気になるから」
黙って大野のコーヒーを奪った二宮。
松本が服の袖をめくる。
「酷く掴まれた？」
「まあ」
「誰に？」
「長田」
「冷やしたの？」
「とりあえず冷やしたけど面倒になってやめた」
ため息をついて二宮を見た松本。
「和、これはどう考えるべき？」
大野の掴まれた跡をじっと見る二宮。
普段なら手当の仕方に文句を言うところだが、事情が事情だ。
こうなるとまた対応は変わってくる。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
