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「本当シャレになんねえな」
はあ、とため息をついた松本。
「本当だよね。俺も予想外」
二宮もため息をつく。
二宮の手の甲には管が繋がれている。
「急にぶっ倒れるんだから。焦ったわ」
「ご迷惑おかけしました」
櫻井が鶴岡と別れて病室に戻った瞬間に、ばたっと二宮が倒れたのだ。
「はっ？」
一番焦ったのは櫻井だった。
そりゃそうだろう、戻った瞬間にいきなり二宮が倒れたのだから。
思わず三人を見るが、三人も目を丸くしている。
三人から見ても、突然のことだったらしい。
「ちょ……誰か呼んで」
「う、うん」
固まっていた相葉が、大野の言葉にすぐナースコールボタンを押す。
やってきた看護師が倒れた二宮を見て、慌てて医師を呼び、処置をして今に至る。
「貧血と疲労だってよ。寝不足も関係ある」
「そっか」
「しかも、俺らに怒ってただろ？ 酸欠状態になってたんじゃないかって」
苦笑した二宮。
「本当ごめん。人のこと言えないわ」
「いいんだよ、あれは俺らも悪かった」
というより、松本たちの方が悪かった。
「それ、鉄剤の点滴だから。自分でちゃんと栄養考えて食え、だってよ」
「鉄剤ぐらい、錠剤で出してくれても」
「錠剤だと飲むのサボるだろ。だから点滴になったんだよ」
「……さすが長い付き合い、病院の人たちも俺のこと分かってるな」
最近はマシになったのだが、前は数ヶ月に一回ばたりと倒れていた。
大抵は貧血だったのだが、気をつけるようになっても年に一度くらいは繰り返してしまう。
その度に鉄剤を投与され、鉄分補給にもっと注意しろと言われるものの、二宮自身が面倒臭がるためどうにもならないのだ。
「数時間は休むこと、だってよ」
「いつ俺帰っていいの？」
「昼になったら」
「ふーん」
松本たちがいた病室の隣。
一人部屋の、少し小さな病室に二人はいた。
本当なら松本たちがいた病室は四人部屋のため、そこで休んでもよかったのだが、うるさいだろうからという病院側の配慮だった。
十五班のことをよく分かっている。
「寝てれば？」
「来る前まで寝てたんだけど」
「何時間？」
「四時間」
「もうちょい寝ろよ」
「呼び出されなきゃ寝てた」
「それは悪かった」
肩をすくめた松本。
松本は早く退院できることになり、二宮と一緒に帰るよう言われた。
追い出された、というのが正しい表現だが。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
