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「前の現場でも大野が怪我しただろ？ 主力戦闘員がどんどん欠けていっててやってられない。三班と十八班は雹隊から抜けるし、補充にかけるしかないんだよな」
「……そんなにやばいんですか、今」
「やばいな。大野が欠けたのがかなりの痛手なんだよ」
あんなに長く大野が欠けるとなると、とぶつぶつ呟いている。
雹隊の班長たちの間ではあまり評判が良くない大野。
ただ、隊員たちからはかなりの人気と信頼を得ている。
威張らないのに、実力はあるのだ。
班長会議で大野がよく嫌味を言われるのは、嫉妬の感情からでもあるのだろう。
雹隊の主力として前線に出ていて、それなのに戦闘員とは思えない雰囲気と容貌が、どうにも気に食わないらしい。
ただ、大野が欠けた今回の現場で、普段以上に負傷者が出たのは事実だ。
一部の隊員の間では「大野がいなかったからこんなに被害が出たんだ」という噂が流れている。
その噂を聞きつけた班長が、大野に悪口を言ったのだろう。
何とも面倒な話だ。
大野は全く関係がない。
「もしかしたら、櫻井がもう一度戦闘員として活動する羽目になるかもしれないぞ」
鶴岡の言葉に、顔をしかめた櫻井。
「それはあり得ませんよ」
「いや、本当の話だ。人員不足が深刻なんだよ」
雹隊は、隊員の七割が戦闘員だ。
毎回の現場に全員が出るわけではなく、班ごとで仕事の頻度も変わってくるのだが、最近はどの班も現場に出ることが多い。
現場に出て、誰も負傷しないということはあり得ない。
それが、最近は運悪く主力として戦う戦闘員の怪我が相次いでいるのだ。
現場に出て戦える人が減ってきている。
いくら雹隊と言えども、隊員の中で実力の差はある。
かなり状況は厳しい。
「十五班にとってはいい話じゃないけどな。現在の非戦闘員を戦闘員にしようとしてる、って話もちらほら聞く。そうなると、元戦闘員の櫻井は確実に戦闘員に戻されるぞ」
嫌そうな顔をした櫻井。
「もしそうなったら、俺部隊やめますよ」
「そりゃ勘弁してほしいな」
肩をすくめた鶴岡。
「それでも、二宮は護身術ぐらいは身につけた方がいいと思う。松本も疲れが溜まってるだろうし、実際今回で気が抜けてる。戦闘員、非戦闘員関わらず、自分の身は自分で守らなきゃいけなくなってる」
「それは同感ですけど」
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
