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「さあね。俺は知らないけど」
松本も煙草を一本箱から出して、結局戻した。
「松潤てさ、どこで怪我したの」
「怪我はしてない」
「打撲。それ怪我ね」
「……怪我っていう怪我じゃねえのにな」
口を尖らせた大野。
「いいから。どこ？」
「相手に投げ飛ばされただけ。すぐに受け身とったけど、若干間に合わなかった」
「だけ、って」
大野は苦笑する。
「打ち所悪いと脊髄やっちゃうのに」
「分かってる。危なかったな」
消灯時間はとっくの昔に過ぎているため、部屋の電気はつかない。
ただ、病室に差し込む月の光だけが明かりだった。
「相葉くんがさ」
松本の言葉に、振り返る。
「月の光、ニノみたいで好きだって」
思い出すような表情になった大野。
「……そういや、そんなこと言ってたなあ」
「知ってたの？」
「何年か前に聞いた」
自分の携帯灰皿に吸い終わった煙草を入れる。
「ニノ、すぐいなくなっちゃいそうだから、ってさ」
ごめんもう一本、と松本に手を伸ばす。
「やめとけよ。やめられなくなるぞ」
「分かってるんだけどさ。どうも吸いたくて」
「……もうダメじゃん」
結局大野に煙草を渡す。
「松潤よりか吸ってねえけどな」
ありがと、と受け取る大野。
「俺も、ニノほどは吸ってないよ」
「ニノと比べちゃダメでしょ。ニノはヘビースモーカーだから」
「まあ。あれは量減らした方がいいと思うんだけど」
「俺からしたら松潤もな」
はあ、とため息をつきながらタバコを吸っているのを見て、また松本は苦笑する。
「個人的に、大野くんには煙草吸ってほしくなかったな」
「よく言うよ。四人も吸ってるじゃん」
「……最近相葉くんが煙草やめたの知ってる？」
「マジで？」
小さく目を見開いた大野。
知らなかったらしい。
「だってよ。悪いなあ、と思いつつさっき吸ってた。煙草のにおいとかさ、誰かが吸ってるの見ると吸いたくなったりするじゃん」
「そうだね。それは悪いことしたわ」
そう言いつつも火を消す様子はない。
「吸うんだ」
「今さらだし。消すのももったいない」
気分晴れるかなあと思ったんだけど、と呟いて息を吐く。
「変わんないね。酒飲んだ方が早かったかな」
「やめとけよ。禁酒令出されたろ」
「そうなんだよね。だから煙草」
「どっちもどっち」
思い切り煙を吸い込んでむせた大野。
「下手かよ」
「今のは下手だったね」
はは、と笑う大野。
これでも、何年も吸ってはいるのだが。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
