4. ページ4
「置いてあったパソコンを解析しました。結果分かったことを簡潔に言いますよ」
『何？』
まだ画面を目で追っている二宮。
「ここ、ただの末端組織ですね」
その言葉に、ばっと顔を上げた相葉。
相葉の動きに、櫻井が一瞬身を引く。
『あー、やっぱり？』
「やっぱりって、知ってたんすか」
『確信はなかったけどね。だから雹隊を送り込むのはやめとけって言ったのにな』
「呑気っすね」
顔を歪めて、また丸まった相葉。
そんな相葉の背中をさする櫻井。
「今、把握してるだけで雹隊にどれだけ被害出てます？」
『うーん、少なくとも十人は死んでる』
「そうですか」
となると、この場所に遺体は置き去りにされているはずだ。
二宮が複雑な顔で建物内を見回す。
あちこちに倒れた敵。
その中に、味方だった人もいるのだ。
帰還不能になった人は、そのまま現場に残す。
それが規則だった。
『あ、松潤帰ってきたみたいだよ。え？ いいよいいよ、ニノと話してるだけだから。手当てしてもらって』
松本を追い払っているらしい声に、また苦笑する。
班長らしくない班長。
それが雹隊十五班の班長、大野だった。
『翔くんと相葉ちゃんもいる？』
「いますよ。ほら」
促されて、櫻井も自分の通信機を手に取った。
「はい、櫻井」
『相葉ちゃんは？』
「……いるよ」
小さな声で返事をした相葉。
通信機の向こうも少し静かになって、大野がははっと笑うのが聞こえた。
それはどこか自嘲のようにも聞こえて。
『十五班は全員無事だ、って報告では聞いてたけど。声聞くとやっぱり安心するね』
大野の声の調子が、先ほどまでとは少し違う。
『翔くん、相葉ちゃんのこと頼んだよ。無事に戻ってきてね。帰還中の事故もあるんだから』
「分かった」
見えないと分かっていながらも思わず頷いた櫻井。
それを見てくすくす笑う二宮。
「笑うなよ」
「ごめん」
『なあに、俺の知らないところで楽しそうにしちゃって』
「そんなことで拗ねないでよ大野さん」
『別に拗ねてねえし』
じゃあね、と通信が切れた。
「大野さん、さすが班長ですよね。あんな感じでもよく分かってる」
「え？」
パソコンの電源を落とした二宮。
「相葉さんの声聞いたから、翔さんにあんなこと言ったんでしょ。相葉さんのことよろしく、って」
「あぁ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 443人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
