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「ねえ、それよりスピリットのこと教えてくれないの？ なんか言ってたじゃん」
大野が再び机を覗き込もうとする。
「話変えようとしてる」
「いいじゃん別に。スピリットの話、気になるじゃん」
「……分かったよ。まだちゃんと分かったわけじゃないんだけどね」
これ、と紙を渡した櫻井。
パッと見て、大野が眉をひそめた。
「字汚ねえ」
「悪かったね」
確かに櫻井の字はお世辞にも綺麗とは言い難い。
それでも、二宮は何も言わずに読んでいたというのに。
「そんなすぐに字が変わるわけないでしょ」
「分かってるけど、翔くんもうちょっと綺麗に書けるでしょ。これ殴り書きじゃん」
「ちゃんと書こうとしてないからね。でも読めるでしょ？」
「頑張れば」
「頑張ればとか言わない」
大野はそう言うだけあってかなり字は綺麗なのだが。
「ふーん、これ協力依頼のメール？」
一通り読んだらしい大野が顔を上げた。
「だと思う。少なくとも仲間内に出す文面ではないよね」
「そうだね、仲間内ならあまりにも文章が他人行儀すぎるし」
ご査収ください、なんて仲間内では使わねえもんな、と笑っている。
「ちなみにそれに添付されてたファイルの内容がこれね」
櫻井がまた別の紙を渡す。
「翔くん読み解くの早くない？ もうそんな読んでたの？」
「まあ。一回分かるとすぐ終わるから」
「へー、こえぇの」
「なんでよ」
それには答えず、また紙に目を落とす大野。
「あ、この日付はネットが死んだ日だね」
「うん、合ってるけど言い方」
「え？」
笑う大野。
つられて櫻井も笑った。
「別にいいでしょ、死んでたし。これ、サーバー攻撃の依頼メールってことか」
「そうだね。しかも似たようなものが何通かある。一つの団体だけでやったものじゃなかった、ってこと」
「まあ、あれはすごかったもんね。世界中で同時にやってなきゃあそこまではならないでしょ」
うーん、と首に手を当てる大野。
「スピリットは個人名じゃなくて総称ってことだよね。めんどくさそう」
「本音出てるよ」
「いいじゃん部屋だし」
「それを言われちゃ」
また顔を見合わせて笑う二人。
「上に言うの？」
「保留かな。ニノがやってるのと合わせて考える。上はどうもスピリットのことを個人だと思ってるから、今回の現場でスピリットのことは解決したと思ってる。そこを蒸し返すのも大変だし、ニノの力借りなきゃひっくり返せないからさ」
「そっか」
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
