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「翔さん」
「あっつ」
「そろそろ休憩しなさいよ」
首を押さえて振り返った櫻井。
手にカフェオレを二本持って笑っている二宮。
「びっくりした……」
「ほら、差し入れ。缶コーヒーと迷ったけど、コーヒーさっき飲んだからもういいでしょ」
「ありがと。でもいきなり首に当てるのやめてくれない？」
受け取りながら苦笑する。
「いつ気づくかなーって思ったら結局気づかなかったんで、そのまま」
「集中してたんだよ」
どれ、とパソコンの画面を覗き込んだ二宮。
櫻井の手元の紙と見比べて、目を丸くする。
「え、翔さんすごいね」
「どうも」
手元の紙にはきちんとした日本語の文章。
その他にも何枚か紙が散らばって、数字とアルファベットが書き散らされている。
表のようなものもちらほら見えた。
「分かったの？」
「うん。いろんなメール見たら、件名の文字列はほとんど同じで。多分これが暗号表の指示なんだろうなって」
あー、と二宮が腕を組んだ。
「件名か。そういや見てなかった」
見てみると、数字とアルファベット、矢印が表示されている。
「ここの数字、全部見たけど一から二十六までしかないんだよね。となるとアルファベットのことを表してるんじゃないかって。ここで数字からアルファベットに直せるな、と思って直したみたら意味通じない文字列でね。じゃあこのアルファベットはなんだろう、って考えたら平仮名に直す指示だったみたいで。ここでもだいぶ苦戦したんだけど。それでも意味通じなかったから、表書いて矢印の数字分ずらしてみたらこう」
ひらり、と紙を持ち上げた櫻井。
「何とか出てきたけど、これメールごとに全部違うみたい。でも指示が同じだから、指示通りに読めば多分出てくる」
「……本当にすごいね、あなた」
苦笑した二宮。
凄すぎるとかえって引いてしまう。
「このタイプの暗号はよくあるからね。何個も組み合わせてあるから難しいだけ」
でもこのメールはハズレだったなあ、と呟く。
二宮もざっと読んで、合点がいった。
「これ、飲み会の誘いの文面だよ」
「まあ、どう読んでもそうだよね」
顔を見合わせて苦笑い。
「むしろ面白いから最後まで読んでみようかなって思ってるけど」
「いいんじゃない？ 何か面白いことあったら教えてよ」
「おっけ」
でもニノが言う通り休憩するか、と立ち上がった。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
