23. ページ23
「うろついたの、ニノにバレるかなあ」
「気にするんだったらうろつかなきゃいいのに」
苦笑する松本。
「松潤がいなかったから」
「そうやって俺のせいにしようとするな」
かこっ、と缶を開ける音がした。
相葉がコーンポタージュを開けたらしい。
「あ、振るの忘れた」
あーあ、と起き上がった相葉。
「まあいいか」
缶を両手で持って、ため息をつく相葉。
松本は黙って缶を開けた。
「あ、俺も振るの忘れた」
「ありゃ。俺たち似た者同士だね」
ふふ、と笑う相葉。
「本当だね。似た者同士だよ」
二人でぼんやり月の光を眺める。
「……前も、松潤と話したね」
「うん」
「あの時も、ニノの話してたね」
懐かしむように話す相葉。
「ニノが全然起きなくて、死んじゃうんじゃないかって。なんかそんなこと話してたね」
「そうだね。翔さんは別室だったし、大野さんは爆睡してたから。相葉くんと話してた記憶ある」
「よく寝れたよね、大ちゃん」
「あれは尊敬できる」
あの時も、同じ病室だった。
「本当に、怖かったなあ。俺のせいでニノがいなくなるんじゃないかって」
「相葉くんは悪くないよ。むしろよくやった方だよ」
「でも、俺がもっと強かったら」
「相葉さん」
弾かれたように顔を上げた相葉。
「今日はあの日じゃない。ニノは生きてる」
「……うん」
目に涙を浮かべながら松本を見て、頷いた拍子に涙が零れ落ちた。
「ダメだね、俺。これじゃ」
「いいんだよ。忘れられるはずないんだから。俺も、翔さんが倒れた時のことは何回も思い出す」
「俺……ニノが撃たれたときのこと、何回も」
守れなかった、と呟く。
そうは言うものの、相葉も撃たれていた。
かすっただけ、と言えばそれまでなのだが、撃たれたのは二宮だけではない。
自分だって怪我をしたのに。
「現場に出ると、思い出しちゃう。翔ちゃんにも申し訳ないよ。翔ちゃんも怪我して非戦闘員になったのに」
相葉の話を聞いて、松本はぼんやり二宮のことを思った。
相葉がこうなること、きっと二宮は分かっていたのだろう。
だから、強引にでも松本も一緒に入院させたのだ。
二宮には敵わない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 443人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
