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「ニノ、なんか手伝おうか」
ずっとパソコンに向かっている二宮を見かねて、櫻井が声をかけた。
「んー、じゃコーヒーお願いします」
「分かった」
仕事を手伝わせるつもりはないらしい。
台所へ消えた櫻井を横目に、紙を取り上げた二宮。
「大野さん、この確認お願いします。班長印が」
ソファに転がっていた大野を振り返る。
大野は右手でそれ、と指差す。
「そこの机の中あるから勝手に押しときな」
「……それで本当にいいのかよ」
「信頼してるからさ」
「見るの面倒臭いだけだろ」
「バレた？」
「バレるわ」
はあ、と立ち上がった二宮。
そのまま、大野の顔面に書類をぶちまけた。
慌てて起き上がった大野。
左腕も動かしてしまったらしく、顔をしかめている。
「ちょっ、何してくれてんの」
「確認。お願いしますよ」
はあ、と大野もため息をつく。
「ニノは本当真面目なんだから」
「あとで隊長から確認されたとき、班長印があるのに班長が知らない、なんてことあったら困るのあんたでしょ」
「なに、確認されそうな内容なの？」
散らばった書類を集める大野。
「だから言ってんでしょうが。じゃなかったら勝手に押してる」
「やっぱり？」
「あんたがあんたなら俺も俺だよ」
「ふーん、似た者同士だね」
留めてから投げてくれりゃ良かったのに……なんて大野が呟いているから、二宮は思わず睨んだ。
「あんた、現場に出れなくても裏方の仕事はできるでしょ」
「何のこと？」
「とぼけんなよ。この班の班長は特殊戦闘員だったはずですけど？」
げ、という顔になった大野。
特殊戦闘員。
非戦闘員が主に担当している仕事も完璧にこなす戦闘員のことだ。
もちろん、今二宮がやっている事務仕事も大野は分かっている。
分かっていてできるにも関わらず、怪我を理由に仕事をしていないだけなのだ。
大野は苦い顔のまま続ける。
「この間の現場で死んじまったんじゃねえの？」
「あーらそう、じゃあこの班は雹隊から霜隊に異動ですね」
「……悪ノリやめろよ」
「先に自分のこと死なせたの大野さんだからね。ちゃーんと読みなさいよ、それ」
二宮に口で勝てるはずがない。
「分かった分かった、読めばいいんでしょ」
大野がしぶしぶ書類に目を通す。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2018年12月9日 2時
