WITHOUT YOU (ページ10)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:102,626 hit

名前も知らないページ10

・

「ほんとにジヨンのだったのね。

半信半疑で
預かったから私・・」

・

「仕方ないよ」

「一応
名前と連絡先。控えてもらったから。」

・

「それにしてもこのお菓子
開けましょうよ。

毒味ですよ。毒味！」

「なら早く食えよ」

さっきまで
警戒してたくせに
スンリはもう
目の前のお菓子に
興味を抱いてて。

ほんと
調子のいいやつ。

「おい、待ってって。」

びりびりびり。

ああ、タッピョン・・・

・

一応それ・・

俺の貰いものなんだけど・・

・

「何ですか？それ。」

「さあな。」

そして
この小さな箱。

表側に
うっすらと聞いたことない
ブランド名が
書かれてあった。

何気なく
箱に鼻を近づけて見ると

やっぱり
い仄かに甘い香りがする。

・

ん・・・

あれ・・

これって。

・

香りほど
その時の記憶が鮮明に浮かぶものはない。

それくらい
リアルに浮かんだ。

・

その小さな箱の甘い香りの記憶。

・

・

「大丈夫ですか？」

・

そう。

彼女に声をかけた時

きっと
彼女がつけてた香水で。

・

「日本の方みたいね。その人。

名前がそうだった。」

・

・

くすぐったくなるような
あの時の笑顔。

・

俺はひとつ

後悔をした。

・

そっけない態度をした自分に。

・

「うんめぇ～これ！」

「どれ、俺にも食わして。」

「あ・・・まってぐぐぐぐるしぃ～ど、毒がも・・・・」

「おい・・・？！スンリ・・」

「・・・あー冗談です。美味しかった。」

「・・・馬鹿かお前は。」

・

タッピョンとテソンと
スンリが
ふざけて笑ってる傍で

綺麗なハングルで
書かれた
二つ折りのメモをまた
見返した。

”ありがとうございました”

たった一行だけ

・

まだ

名前も知らない君からの

メッセージを。