WITHOUT YOU (ページ40)

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何ひとつ知らないページ40

・

「これで良し。」

久しぶりに事務所のソファーで朝を迎え

一度家に帰り
熱いシャワーを浴びた。

・

昨日は思ったよりも作業が進んでくれて

カムバックに向けての重みも
少しは軽減された気がした。

・

助手席には
こないだのCafeのスイーツの箱と

それから
ヨンベに頼まれたドリンク。

・

A大丈夫かな。

夕方の空いた時間に俺は

連絡をしないまま

Aの家へと車を走らせた。

・

驚くかなってそう思って。

・

大丈夫かなー。

そう思いながら
インターフォンを鳴らした。

・

少し時間を置いて
開いたドアに

「A、大丈夫・・・」

そう、

言いかけた

え・・・？

「あ・・えっ・・と・・」

・

あれ・・・？

そこに立ってたのは

Aじゃなく

一瞬部屋を間違えたのかと
思った

いや、ここ

Aんちだよね・・・

上半身裸でバスタオル首からぶら下げてる
男が目の前にいて

髪の毛はまだ濡れてて。

「あの・・・」

・・・誰だ？

その男も

なんだ？って

同じこと思ってる顔してて。

「・・・今寝てるんですけど起こしますか？」

「いえ、すいません大丈夫ですこれ・・
渡してください・・・」

すげー気まずい・・・

引っ込むにも引っ込めない状況で
俺は買ってきたものを手渡した。

・

「あの・・・っ」

「失礼します・・・」

戸惑ってたその男の言葉を無視して

軽く頭を下げてドアを閉めた。

・

エレベーターのボタンを押して
すぐに開いたドア。

下のフロアのボタンを押した。

・

何やってんだ俺は。

・

顔見られたとか

そんなことは
どうでもよかった。

・

彼氏・・・いたんだ。

・

事務所へ向かう車の中で

それだけが鮮明に浮かんだ。

・

思えば俺は

Aのことは何一つ知らなくて。

・

考えてみればいつも俺の話ばかりで
自分のことは何一つ話さなくて。

好きなやつ・・・

いないって言ってたじゃん。

・

けど
良かった。

・

一人じゃなかったんだな。Aは。