暗黙の了解 ページ38
・
ヨンベの後ろの席で
俺はiPhoneを取り出して
通知も来てない
ロック画面を眺めた。
・
シートに重たくなった体を預けて
カーテンのかかった窓を少しだけ
開けた。
・
大丈夫かな。
1人で寝込んでるのかな。
・
”彼氏作ればいいのに”
こないだ自分でAに言った
言葉を思い出す。
”大きなお世話です！”
俺の方見向きもしないで
キッチンに立ってたA
いつもああやって1人でいるのか？
・
ぼんやりと考えてたら
シートに置いたiPhoneが振動して
”ジヨンごめんね？風邪ひいちゃったの。
メール返せなくてごめんね。”
・
絵文字のひとつも入ってないそんなA
からのメール。
けど
どうしてか
俺は嬉しかった。
・
「ヒョン、明日少し時間ある？」
「明日？なんで？」
バックミラー越しに俺を見ながら
そう言うヒョンに
「そう明日。」
もう一度念を押す。
「どっか行くの？」
後ろ振り向いてヨンベもそう言った。
・
「お見舞い。すぐだから。」
そう言った俺に
「マジで？」
いつものように笑ったヨンベに
こくりと頷いた。
「なら俺も。」
「お前も？！」
・
「いや、俺一人で行く。」
・
突発的だった。
どうしてか。
は？
小さな目を開いて
ヨンベは俺を見た。
「なんとなくね。」
・
「分かった。ヒョン、時間作ってやって。」
・
マネヒョンはいつだって
返事もしてくれないけけど
これが暗黙の了解ってやつ。
・
「俺よりも仲良いな。ジヨン。」
・
「かもね。」
いつの間にか俺はヨンベよりも
Aとの仲が縮まって
・
正直さっきまでは
どうして俺に連絡くれなかったんだ
なんて馬鹿みたいに思ってて。
・
ただなんとなく。
俺を頼ってくれたらいいなって
”ヨンベから聞いた。
明日も休めるの？”
”うん・・明日も休みもらったの”
”ゆっくり休んで。”
簡潔なメールを送った。
”うん。ありがとうジヨン”
・
明日
うまいもんいっぱい持っててやる。
だから今日は頑張れ。
・
そのままレコーディングスタジオに
直行した。
今日はうまく歌詞が書けそうな
そんな気がしたから。
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作者名：菫 | 作成日時：2015年1月6日 1時
