陽だまりに溢れて (ページ49)

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４人がそれぞれに思うこと・７ページ49

桃side

赤「分かるよ。怖いよな。」

そう言って少し冷えた俺の指先を両手で包み込むように優しく握る。

赤「俺も昔そうやった。まぁ、ぶっちゃけ今もそうやし、そう何回も経験したからって慣れるもんでもないねんけどな」

視線は繋いだ俺の手元だが、昔を懐かしむようなその眼差しの先にはもう二度と会うことないあの人とのたくさんの思い出があるのだろう。

その顔を見て、つい初めて大毅の口からあの人の話を聞いた日のことを思い返す。

あの時、大毅はまだ18歳の高校生だった。

今よりもずっと繊細だった大毅が自分のセクシュアルマイノリティを年下の流星、神ちゃん、それにまだ中学生だった俺にカミングアウトすることがどんなに勇気のいるのことだったか。

今でも大毅がどんなにあの人を好きでも、俺はあの人を許すことはできない。

きっと流星も、それに神ちゃんも。

赤「望は偉いな。俺は自分がゲイって知られたらみんなに軽蔑されるんやないかって、そんなことばっか気にしとる。昔も今も」

桃「え？」

赤「アホみたいやろ？分かっとんねん、あいつらそんな奴やないってことは。でもみんなええ奴らやからさ…受け入れられなくても気ぃ使うてくれたり、むっちゃ考えさせて悩ませたり、仕事と関係あらへんことで困らせたくないやん」

なんでなんやろ…こんな時でも相手の気持ちを第一に考えてんの。

ほんまに、大毅は優し過ぎんねん。

赤「昨日さ、俺ちょっと嫌そうにしとったやん？カムすんの。あれさ、覚悟が足らなかったんよ」

桃「覚悟？」

赤「おん。仮にも芸能人の俺が恋愛すること。俺は “普通の恋愛” はできひんから…」

桃「普通って……じゃあ、俺も普通の恋愛無理やわ」

赤「え〜？望は女の子とも付き合ってた事あるやん」

桃「それ、もう10年くらい前の話やん。忘れてや」

あれは大毅にフラれて自暴自棄になってた頃の話やし。

失恋のショックで落ち込んでた時期にたまたま告白されてなんとなく付き合ったけど、俺が相手に気がない事がすぐにバレて１ヶ月も続かずフラれたっけ。

高校の友達にしか彼女ができた事は言っとらんかったのに、何故か大毅は知ってたみたいやし…

赤「俺……未だに夢見てるみたいなんよ。望と付き合えて、恋人になれてほんまに幸せなんよ」

そんな風に照れ臭くそうに笑いながらも真っ直ぐに俺を見つめるその姿に気付かされた。

覚悟が足りなかったのは俺の方やって。