陽だまりに溢れて (ページ39)

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人の気も知らないで・２５ページ39

桃side

何があったんかは教えてくれんかったけど、流星が俺たちの関係に気づいていた上で俺に連絡をしてきたって事は、なんとなくあの人絡みの事なんかなって、ここに来る前からそんな気はしとった。

赤「……なん、で………」

数時間前まではあんなにも楽しそうに仕事をしていたのに、薄暗い部屋の中で俺を見つめるその表情は驚きの中にも悲しみと辛さに心が沈んでしまっているのが伝わり、そうでなければいいと思っていた悪い予想が確信に変わった。

これまでに何度も見た、あの人の事を考えてる時の顔。

もう10年近く経つのに大毅の中からこびり付いて少しも消えないあの人の存在。

桃「なんでって、会いたくなったから来てもうた。」

立ち尽くしたまま動けないでいる大毅に目線を合わせそう言うと、全身の力が抜けたように頽れそうになる大毅を力いっぱい抱きしめた。

赤「ごめんっ…」

大毅が倒れないように二人でその場にずるずると座り込む。

そんな風に謝られると、そうとは言ってないのにあの人の事で謝られているように思えて、自分の中で真っ黒な感情がじわじわと広がっていく。

床に座って俯いたままの顔に覗き込むようにして唇の端に触れるだけのキスをした。

ほんま俺って最低。

心配で来たはずやのに、元カレに嫉妬して苦しんでいる相手にいきなりキスとか。

大毅は一瞬顔をバッと上げるもすぐにまた俯いてそのまま動かない。

桃「…嫌やった？」

下を向いたまま首を横に振る恋人がただ愛おしくて、右手で頸をわさわさの撫でる。

赤「………なんで…」

桃「え？」

徐に大毅が俺の右手を掴むと両手でふにふにと手のひらで遊びだした。

少しくすぐったいがじっと大毅の言葉を待っていると、予想外な事を聞いていきた。

赤「なんで唇から外したん？」

桃「へ？…いや、やって俺まだうがいしてへんし…」

赤「なんやそれ。でも、そうやな。うん…ふふっ。」

桃「なんで笑うん？やって大毅、ドラマあるし。風邪引いてまうかもしらんやん！」

赤「そうやな、うん。でも、なんかおもろ。くふふっ。」

何がそんなに面白いのか、一人で肩を揺らして笑っている。

桃「えっと、大毅？どうしたん？」

まだ俯いたままの顔をまた覗くと、先程までとは違う、俺とおるときにだけ見せてくれる柔らかく微笑む表情がそこにあった。