陽だまりに溢れて (ページ2)

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愛しい秘密・１ページ2

赤side

夕方５時。

仕事は１日オフだったが、若干煮詰まりつつある歌詞の執筆作業に貴重な休日を費やし、それでも数行しか進まず、気づけば夕暮れ時を迎えていた。

割と好きなはずの夕陽を見て少しばかり虚しさを感じてしまう。

もうきっと今日は何も浮かばないだろう、と半ば諦めるように気分転換にとピアノを弾き始めた。

今、作詞に奮闘中の楽曲ではなく、最近覚えた有名なアニメのテーマソング。

弾いてるうちにだんだん楽しくなってきて、これまでに覚えた曲をメドレーにして遊び始める。

何曲か続けて弾いてレパートリーも尽きると、なんとなく溜息が漏れた。

完全に集中力が途切れ、そう言う時は潔くやめるに限るとノートと鉛筆を片付ける。
コンビニでも行こうかと立ち上がると、タイミングを計ったかのように携帯が振動した。

桃【今家におる？仕事終わったんやけど、東京着いたらそっち行ってもええ？】

合鍵も渡しているし、それなりに長い付き合いになるのだから勝手に上がってもいいと伝えているのに、毎回必ず確認の連絡がくる。

律儀なやつ、と思わず口元が緩む。

赤【ええで。夕飯、食うなら作っとくけど？】

桃【ほんま？助かるわー！楽しみにしとる】

なんてことのない、恋人同士とのやりとり。
俺の性格を分かってるからこそ、あえて毎回確認をとるところも、でも遠慮がちに甘えてくるところも、文章だけで伝わってくる。

赤【了解。待っとる】

未だに素っ気ない言葉でしか言えないけど、文章だけなら素直に気持ちを伝えられるようになった。

きっと、それもこれも全部お前のおかげやな。