◆昨日と明日・７ ページ7
桃side
赤「あーあ、怒らせてもうた…」
そんな事を言いつつも焦っているようには全く見えない。
事の発端が自分だというのに、初めて見る二人の言い争う姿、しかもあんな風に神ちゃんに怒るしげを、ただただ唖然と見る事しかできなかった。
赤「小瀧？」
桃「……え？、あっ、ごっごめん…」
赤「なんで謝るん？小瀧はなんも悪い事なんてしとらんやろ？」
桃「でも…神ちゃん怒らせてもうたし、しげも神ちゃんと喧嘩みたいになってもうたし…」
赤「それこそ気にせんでええよ。俺もちょっと言い過ぎたし」
首を掻きながら神ちゃんが出ていった扉を見やるしげに、先程まで纏っていたピリついた空気はもう感じない。
それどころかこちらに向き直ると、少し困ったように眉尻を下げた顔で俺に謝ってきた。
赤「それより、俺の方こそごめんな」
桃「え、なんでしげが謝るん？」
赤「いや…神ちゃんさぁ、控室入る前からお怒り気味やってん。俺はそんなんいちいち言う必要無い言うてんけどな、一回言うって決めたら聞く耳持たんくてさぁ…」
しげの話によると、神ちゃんはインタビューが終了した直後から俺に言おうとしてたらしいが、大勢のスタッフさんがいる手前、控室に入るまで待つようにしげが説得したらしい。
赤「言うにしたって、感情任せやと伝わるもんも伝わらんって言うたんやで？」
もぅ困った先輩やで。なんてボヤくしげが、いつもより大人っぽく見えた。
そんな事言うたら、今度は逆に子供っぽくむくれんのかな。
あの顔、ちょっと可愛いんよな。
赤「神ちゃんの事、怒らんでやってな？」
桃「え？あっ、それはないない！俺も今度から気をつける」
赤「まあ、注意するに越した事ないからな。神ちゃんも、あんな言い方やけど、小瀧の事心配してのことやから」
桃「うん。流星の事があったからやろ？」
しげの表情が一瞬にして強張りを見せ、こくりと小さく頷いた。
赤「流星も謹慎覚悟で事務所に相談したし、この前警察が話しつけた言うてたやろ？これでダメならまた警察に相談せなあかんやろうしな。小瀧も怖いやろうけどできる限り一緒に帰ったってな。」
桃「うん。しげと神ちゃん、家逆方向やし俺らに任せて」
赤「なんや、頼もしいな。…ありがとうな」
桃「そう？そうなんかな……」
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作者名：がうら仁歩 | 作成日時：2022年2月1日 16時
