覚悟の話・９ ページ29
赤side
通話になっているはずなのに神ちゃんは黙ったままで、恐る恐るこちらから話しかけてみると、小さなため息が一つ聴こえた。
赤「あの…神ちゃん、怒っと……る、よね？」
緑『…うん。怒っとる。なんで俺が怒っとるか、分かる？』
赤「それは…」
今日の昼過ぎ、楽屋で弁当を食べている時やった。
携帯の通知画面に表示されたその名前を見て、すぐさま画面をタップする。仕事で遅れそうとか、そんなところだろうと勝手に思ったったから。
緑【しげのドラマのことで聞きたいことがあるんやけど。】
赤「は？」
一人きりの楽屋の中で、自分の声が虚しく響く。
正直、今日のことで頭がいっぱいで、ドラマの件は後回しにしていた。
どこでどんな風に聞きつけたんかは知らんけど、よりにもよって神ちゃんに知られてまうとは…
再び携帯が振動し、その内容に更に追い打ちを掛けられた。
【神山からドラマの事、聞かれたよ。まだメンバーに言ってなかったの？】
どうせ神ちゃんに同行しとったマネージャーから報告でもあったんやろ。神ちゃんなら絶対、マネージャーに事実確認をするはずや。
文面だけで、チーフマネの呆れ顔が想像つくわ。
俺が言葉に言い淀んでいるのを察してか、神ちゃんが言葉を続ける。
緑『……いや、ごめん。俺も今するべき話やないって事は分かってんねん。でも、どうしても今日メンバーと集まる前に聞いておきたかったから。』
赤「うん…。俺も、ごめん。ドラマの事でみんなに隠しとる事、色々あり過ぎで神ちゃんがどこまで聞いてるんか、正直予想がつかんくて…」
正直に白状すれば、またため息が聞こえる。もう呆れたといった雰囲気で。
緑『…最初はメイクさんに聞いてん。台本読んでる途中で苦しくなったんやて？』
赤「あー…うん…。やけど、久しぶりやってんで。」
やっぱり、出どころはあの人やってんか…
緑『久しぶりやったとかそういう事やないやん。あんなやっすい賄賂渡したりして。』
赤「安い賄賂…」
緑『そうやん。ガキか思ったわ…。マネージャーにも自分から言う言うて口止めしとったやろ？俺がどんなに聞いても、本人に聞いての一点張りやったわ。』
赤「そ、そっか…」
緑『俺が知っとるのはここまで。まだドラマのタイトルすら知らんし、しげがそこまでして隠したい理由も分からん。でも、それが逆に色んな人に心配かけてるの、それは分かっとる？』
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作者名：がうら仁歩 | 作成日時：2022年2月1日 16時
