＊嫉妬 ゾム ページ48
体育の授業。女子の方が早めに終わった為、今は男子の方を見ている。
サッカーのゲーム中らしく、点が決まるたびに黄色い歓声が上がる。
「はえーやっぱ昔からすごいなぁ…」
特に歓声が大きくなるのは、幼馴染のゾムが点を決めた時。
成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、おまけに生徒会会計という、
モテる男には欠かせない条件がフルで揃っている彼。
まぁ当然、人気者な訳で。
学校一のマドンナにも告白されたとかなんとかで。
小学生とか中学生の時は誰よりも一緒にいたのに、高校に上がってからは
メッキリ接点がなくなり、お互いに関わらなくなった。
彼が生徒会に入ったのも大きいけど、なんとなく距離を感じていた。
一応同じクラスではいるけど、あまり喋らなくなった。
否、何を話していいか分からなくなった。
昔はずっと一緒だったのに。
ある日の帰り際、突然ゾムに話しかけられた。
「なぁA。今日は生徒会ないから、久々に一緒に帰ろうや」
「え、あ、うん…」
なんだろう。妙に緊張する。いつもは別の人と帰ってるのに。
「「…」」
気 ま ず い。無言の状態が5分くらい続いている。
するとゾムが足を止めてこう言った。
「なんで僕の事避けるん？」
その声は弱々しくて小さかったけど、私にははっきり聞こえた。
「…避けてなんか、ないよ」
「じゃあなんで構わなくなったん？」
ゾムが手の届かない所へ行ってしまったから、なんて言えない。こっちの都合でしかない。
「…別に、いいでしょ。私じゃなくても他にいっぱい可愛い子いるし、友達も沢山いるし」
自分で言っておきながら惨めになってきた。涙が頬を伝った。
「あんなん表だけの付き合いや。僕にはAしか映ってないんやけど」
卑屈な言い方になってしまったから、怒っていないんだろうけど、怒っているように聞こえた。
怖くて、寂しくて、涙は一向に止まらない。
すると背中がふわっと温かくなって、耳元で震えた声が聞こえてきた。
「Aは僕の事、嫌いになったん？僕は好きで好きで堪らない」
「…え？」
こんなに弱った姿を見たのは初めてだった。不思議と涙は止まった。
「…付き合うて、A」
抱きしめる力が強くなった。
そんな風にされたら、否定できる訳ないよ。
「…はい」
その時、小さい頃の記憶が蘇ってきた。
『お母さん！私、ゾム君と結婚するの！』
『おばちゃん、一生のお願いや！僕、Aの事ずっと守るから！』
「私の事、ずっと守ってね」
「当たり前や。ちゃんと誓うたからな」
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作者名：ウィング＆テンライ | 作成日時：2018年9月23日 13時
