＊書記長 トントン ページ25
「失礼します」
ノックを4回して書記長室に入った。
「Aか。どないしたん？」
「オスマン様が取引先から美味しいお紅茶を頂き、私にお裾分けしてくれたので、書記長も一緒にどうかと」
時計をちらりと見ると、15時を過ぎていた。お茶菓子も持ってきたから、休憩には丁度いいだろう。
「もうこんな時間か…せやな、ちょっと休憩しよう」
書記長は席を立ち、ローテーブルの方へ移動された。
相変わらず目の下には濃い隈があり、軍服も少しくたびれているように見えた。
「お砂糖は如何致しますか？」
「入れんでええよ」
「かしこまりました」
カップに紅茶を注ぎ、書記長の前に差し出した。次にレモンをスライスし、お皿に盛り付けた。
「お好みで入れてください。レモンに含まれるクエン酸には疲労回復効果があるんですよ。
書記長、今日もお疲れ様です」
「ありがとう」
続いてお茶菓子も差し出し、私は書記長の正面に座った。
「ご一緒してもよろしいですか？」
「もちろん」
自分の紅茶を注ぎ、一口飲むと、とても上品な香りが広がった。美味しい。
私が紅茶を堪能していると、突然話しかけられた。
「なぁ、A」
「なんでしょう」
「めっちゃ言いづらいんやけど…その、『書記長』って呼ぶのやめへん？」
そんな事を聞かれるとは思わなかった。だって書記長は書記長だもん。
「なぜですか？」
「なぜって…この基地内で書記長って呼ぶの、Aくらいしかおれへんから」
「え、そうなんですか？」
「せやから、なんとなく壁を感じるっていうか…そんな感じや」
まさかそんな風に思われていたとは…礼儀を重んじ過ぎた？
「分かりました。それでは、どの様にお呼びすればいいですか？」
「普通にみんなが呼んでるように『トントン』でもなんでもええよ」
「はい、トントン『様』」
「…『様』は取れないんか？」
「それで染み付いてるもので…申し訳ありません」
「まぁ無理強いはせんよ。ありがとう」
そういってトントン様は再び席を立ち上がり、私の頭をポンポンっと軽く叩いてお仕事に戻られた。
私は手早く片付け、そそくさと書記長室を後にした。
「はぁ〜…」
思わず床に座り込んでしまった。恥ずかしいけど、ちょっと嬉しかった。
「はぁ〜…」
勢いでやってもうたけど…嫌われたりせんとええな。
「「明日、どんな顔で会えば…」」
ーーー
終わり方意味不シリーズ((
＊トリック・オア・トリートと言ってみた 全員(2人除く)→←＊ズコット グルッペン・フューラー
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作者名：ウィング＆テンライ | 作成日時：2018年9月23日 13時
