＊俺のため コネシマ ページ23
「…よし」
今までの凄惨な光景がフラッシュバックする。
私は今日、死ぬ。
もうこりごり、こんな人生。
いじめられ、裏切られ、誰にも信じてもらえない。
冷たい風が私の頬を掠めた。まるで私を嘲るように。
柵を乗り越え、飛び降りようと手に力を込めた時、屋上の扉が開いた。
「はぁっ、はぁっ…」
「…なんで来たの」
そこには幼馴染みのシッマが息を切らして立っていた。練習着の泥だらけの姿で。
「はぁっ…なんでもクソもないやろ。人が、それもAが死のうとしとんねんから」
「シッマには関係ないでしょ」
「関係あるわ、アホ」
何が関係あるの？幼馴染みだから？所詮、他人じゃない。
「大体、そこで何をアピールしてんねん」
「はぁ？」
「放課後の、しかも部活で人がぎょうさんおる時に飛び降りようとしてんのやろ？
死にますアピールか？あ？」
…随分私も舐められたものね。ムカつく。
「えぇ、そうよ。最期くらい、華々しく散ってやろうと思ったの」
「…すまんな」
さっきからシッマは何を言いたいのか分からない。
おちょくりの次は謝罪？私で遊んでるの？
「さっきから分かったような事「寂しかったんやな」…は？」
何を言いだすかと思えば、そんな事？くだらない。
「最期くらい、見て欲しかったんやな。
存在を認めて欲しかったから、気付いて欲しかったから、この時間帯と死に方を選んだんやろ？
何も出来んくて、ほんまに申し訳ない」
「…なんでも見透かしたような事、言わないでよ！」
気付いたら私は泣いていた。
「ハハッ、そうだよ…ずっと寂しかったっ…愛されたかった！気付いて欲しかった！
普通に生まれて…友達に囲まれて…彼氏とデートだってしてみたかった…っ！」
「それが俺じゃダメか？」
「…え？」
身体がふわっと温かくなった。シッマに抱きしめられたのだ。
「…好きや」
その声は震えていたけど、私の心に響いた。
私に気付いてくれた人がいた。私を愛してくれる人がいた。
嬉しかった。
「俺のために、生きてくれ」
抱きしめる力が強くなった。そんな事されたら、死ぬ訳にはいかないじゃん。
「…分かった。もうちょっと、生きてみるよ」
「はぁ〜よかった…俺が死ぬかと思ったわ。お前がのうなったら俺、どうしたらええか…」
「…ありがとう」
私は柵を再び乗り越え、屋上を後にした。
生きる気持ちを、喜びを、ありがとう。
彼は、最高の幼馴染みです。
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作者名：ウィング＆テンライ | 作成日時：2018年9月23日 13時
