＊雨のち晴れ トントン ページ1
シトシトと降りしきる雨。私の足元には、ズタズタに引き裂かれた傘。
今日も、やられた。
どうやって帰ろうか考えてるうちに雨足は強くなり、風も吹き荒れてきた。
仕方ない。濡れて帰ろう。私が正門に向かって歩こうとした時、誰かに呼び止められた。
「そのまま帰ったら風邪引くで？」
同じクラスのトントン君だった。
「…うん。しょうがないよ」
「傘は…使えへんみたいやな。なら、一緒に帰ろうや」
「え？いや、いいよ…迷惑、でしょ？」
「迷惑やと思っとったら声かけへんよ。行くで」
するとトントン君は私の傘を畳んで半ば強引に私を傘に入れた。
「方向どっち？」
「あ、えっと…あっち」
「同じやな！僕もあっちやから、送ったるわ」
「あ…りがとう」
私達は正門を後にした。
「なぁ」
「は、はい…なんですか？」
「敬語やのうてええよ。ちょっと聞き辛いんやけど…いじめられとるん？」
思わず立ち止まってしまった。本当のことを言っていいのかな…？
「答えられんかったらええよ。あんま話したことないのに聞くことちゃうもんな」
「…ごめん」
コミュ障すぎて会話が続かない…困ったなぁ。
「とりあえず、何かあったら僕に言ってな。出来る限りのことはしたるから」
なんか、乾ききった心が潤っていくような、そんな感覚があった。
親にも言われたことのないその優しい言葉に、思わず涙が出た。
「……っ」
「え！？なんで泣くん！？すまん！なんか言ったか…？」
「ち、違う…の。嬉しくて、つい…。ありがとう！」
やっとちゃんとお礼が言えた…！やった！
私達はその後、互いの話をしながら帰った。
そしてなんと、一緒に登校する約束も出来たのだった。
明日から、嫌いな学校も好きになれそう。そんな予感がした。
ー翌日ー
トントン君が指定した場所に行くと、彼ともう1人、誰かの姿があった。
「お…はよう」
「おはよ。こいつも一緒に登校してええか？」
「も、もちろん…」
「君、誰？」
…もうちょっと聞き方ありませんかね。
「楪Aです。あなたは生徒会長の…？」
「せや。グルッペン・フューラーや。よろしく頼む」
「ほな、行こか」
私の両隣に2人が並んだ状態で歩き出した。
「…真ん中は恥ずかしいです」
「何されるか分からんからええやろ！ハハッ」
久しぶりに楽しい時間を過ごせそう。ずっと続けばいいのになぁ。
…なんて考えてるのもつかの間。
アイツらは、こちらを睨みながら横を通り過ぎた。
「放課後、校舎裏に来い」だって。
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作者名：ウィング＆テンライ | 作成日時：2018年9月23日 13時
