03:名前 カイトside ページ4
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｢───…もう大丈夫だな…｣
出港ギリギリでなんとか船に乗り込んだ｡
港から離れた船の上で少し安堵したが直ぐに気を探らせる｡
ざっと船内を見てきたが､やつらの姿はどこにもなかった｡
念のために確かめたし…間違いないだろう｡
背中に背負った9歳弱の子供を下ろすと酷く弱りきっているのがわかる｡
金色の髪も真っ白な肌もこんなにボロボロになるまで走り続けて…辛かっただろうに｡
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｢取り合えず傷を手当てして寝かすか…｣
水を張った桶に布を浸し､汚れを拭いとると包帯を巻き付け手当てをした｡
頭の傷は浅いが…念のために船医に見せにいこう｡
見える範囲で酷かった傷は…足だった｡
腕は服に隠れていたから見えなかったが｡
裸足で走ってきたせいだろう…傷だらけで血塗れで､化膿も酷く悪化させていた｡
これで走っていたのだからスゴいのだが…｡
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｢……ぅ…｣
パチリと目を開く若草の瞳…が一気に見開かれると壁際まで一気に下がっていた｡
腰を屈め､唸り､睨む小さな体｡
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｢…俺はお前の味方だ｣
｢………｣
｢そんなことをしてると傷が開くぞ｡寝てろ｣
｢…ここはドコだ…｣
｢船の上だが…｣
｢………｣
睨むところをみるとまだ信用されてないようだ｡
無理もない…見知らぬ野郎に連れてこられた場所が船の上ならな｡
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｢…俺はカイト｡ハンターのはしくれさ｣
｢ハン…ター…?｣
首をかしげながらも話に食いついた｡
よし…これならいけるはずだ｡
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｢あぁ｡お前の名前は?｣
｢……｣
首を横に振るうと瞼を伏せて肩を落とす｡
小さく震えながら､ため息をついた｡
｢どうかしたのか?｣
｢……ない｣
｢……?｣
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｢名前…ない｣
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長い金髪を揺らしながら､無表情を壊さずに床をじっと見つめる｡
何も考えていない…瞳だった｡
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｢…すまなかった｣
｢気にしないでいい｡…こっちこそ手当てをしてくれたのに…疑ったからな…ごめん…なさい…｣
震える体を押さえながら小さな頭を下げている｡
近づいて肩に触れると大きく体を震わせた｡
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｢…とにかく､ここは安全だから寝てろ｣
ベットを指差すと俺となんども見比べるようにして…頷く｡
立ち上がるとその体を横にしてジッと見つめてきた｡
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｢本当に大丈夫か…です?｣
それは疑いから来るものではなく､本気で心配そうにしている姿だった｡
全く最近のガキは…｡
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｢大丈夫だ｡…それより呼ぶときに不便だから名前…つけるぞ｣
｢え…?｣
｢そうだな…───…A…とかどうだ?｣
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革ベルト
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作者名：月影腹痛
| 作成日時：2013年12月18日 21時
