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「あ、ごめん。ちょっとお手洗い行ってくる」
そう言ってパタパタとかけていったカヤさん。
その姿を見送ってから、俺は紅茶を一口飲んだ。
それはじんわりと内側から暖めてくれているようで、とても暖かくなる。
じっくりと味を堪能していると、マスターさんが急に俺に話しかけた。
「失礼ですが……カヤ様とはどういったご関係で……」
「ああ、電車のなかで困っていたのを助けただけですよ。そしたら……」
「ここまで引っ張ってこられたんですね?」
「そ、そうですけど……よく分かりましたね?」
驚きながらそう返すと、マスターさんはカヤさんと似たような顔で苦笑した。
その顔に少し違和感を覚える。
あれ? カヤさんに似てる……?
「お嬢様はいつもそうですからね……ご両親に大反対されたのに、夢を叶えるために家を一人で出られましたから」
「夢……?」
「おや、お嬢様はおっしゃらなかったのですかね。お嬢様は駆け出し中の歌手で」
「ちょいちょいちょい。おじいちゃんストップ!」
マスターさんはそこまで言ってくれたのだが、途中で戻ってきたカヤさんにその先を遮られてしまった。
ギギギっと効果音が付きそうなほど固まりながら振り返ったカヤさん。
「ど、どこまで聞いた……?」
「あー、多分、カヤさんとマスターさんは家族なんだろうな……と想像できるところと、夢が歌手ってとこです」
「あちゃー。ばれちゃったか。じゃ、せっかくだから聞いてってよ」
「えっ、」
俺の返事を待たないままそう言って、カヤさんは足元に置いていたギターを手に取る。
ぽろんっ……と音がなった。
マスターさんが店内のバックミュージックを落としたのを確認してから、カヤさんは歌い始めた。
軽やかなギターの音から始まるその曲。
カヤさんの声は、可愛らしいけれどどこか凛としていて、言葉で表せないほど綺麗だった。
フェイクはどこか悩んでいるように、
A・Bメロは、息漏れの多い優しい声で、
サビは、力強く、未来へ向かっていく様子を、実際に今ここで見せられているよう。
そして、歌詞。
『Even if you can't, it is your proof of your hard work so you don't have to worry.』
とても、それが印象に残ったのだ。
特に、歌っている姿。
少し目を伏せて、自分の感情に任せて思いのままに歌う姿は、まるで自分自信のありのままと向き合っていられるように、願っているようだった。
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あおい(プロフ) - 完結後、読ませていただきました。どのお話も、少し考えさせるような、奥が深いもので、私もこういう小説を書いていきたいです。 (2020年4月28日 7時) (レス) id: 331ddf8f4c (このIDを非表示/違反報告)
りぃあ♪# - 完結おめでとうございます!どのお話も奥が深く、読んでいてとても考えさせられました。とても面白かったです。 (2020年4月18日 8時) (レス) id: 77648adcbf (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 完結おめでとうございます。どのお話もすごく心に残り、自分と重ね合って読んでいました。すごくいいお話だったと思います。 (2020年3月31日 19時) (レス) id: eb71493e70 (このIDを非表示/違反報告)
小幅 - とても面白い作品ですね!続きが楽しみです。 更新、無理しない程度に、頑張ってください! (2020年3月30日 15時) (レス) id: 62007663da (このIDを非表示/違反報告)
はんな(プロフ) - 情景描写がくわしくて、上階が本当に浮かんできます!素晴らしすぎる… (2020年3月28日 11時) (レス) id: 3170240b5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷・結・ゆいなー・あお・ここは x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hp-rei/
作成日時:2020年3月24日 19時