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「それより、夏油呪詛師たちの方は大丈夫そうですか? 一応上層部には話をつけたつもりですけれど、少し心配です」
「……傑の安全性をより確かなものにするために、アイツは今超強力な縛りかけられてる真っ最中。傑のとこにいた双子は高専側で保護、新盤星教は解体」
「ああ、ご丁寧にどうも」
五条呪術師は大きな溜息をつきながら私の背中に腕を回し、優しく抱きしめる。人の温もりとはこうも温かいものなのだなとどうでもいいことを考える。爽やかな洗剤の香りが鼻を擽った。
なんだか今日の五条呪術師は甘えたな子犬のようだ。
「……泣いてます?」
「んなわけねーだろ」
「そうですか」
声が震えているがこれ以上虐めるのはやめておこう、後が怖い。
とりあえず目の前にあるフワフワで真っ白な頭を優しく撫でておく。昔従兄が飼っていた甘えたのポメラニアンと姿が重なる。
「……それにしても、よくあの頑固爺共を説得できたね」
「ああ、ちょっとした取引をしたんです。あちらに私の魂を預ける代わりに、私は己の不死身の身体を最大限に生かして呪術界に貢献していくと」
途端、五条呪術師は「はあ!?」と顔を歪めて顔をズイと近づける。今にも鼻と鼻がくっつきそうな程の距離。青い瞳が目の前にある。そこまで顔を近づけずともちゃんと話は聞くというのに。
「なんてことを……! お前、自分が何したかわかって――」
「私に与えられた主な仕事は呪霊の等級調査ですね。等級調査は危険がいっぱいなので私にはうってつけですね」
「そういうことじゃねーんだよ!」
部屋に五条呪術師の怒鳴り声が響く。しかしすぐに我に返ったのか「ごめん……」と呟き、再び私を抱きしめる。強く、絶対に離さないように、という意思がなんとなく伝わってきた。
私は抵抗も無しに彼を静かに受け入れる。
「お前は……道具じゃない…………」
消え入るような声でそう口にする五条呪術師。
しかし、空気が読めないで評判の私の口は思ったことをペラペラそのまま言葉にする。
「それなら、呪術師ならば道具であっても良いと? 私は呪術師を支える道具で、呪術師は非術師を護るための道具。私と貴方の何が違うんですか」
彼は私の質問には答えず、代わりに小さなすすり声が返ってきた。
もしや本当に泣いてたりして。
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ガシヤマ(プロフ) - れーとさん» イベントに参加させていただきありがとうございます! 自慢の作品なので神作と言ってもらえてとても嬉しいです。気が向いたら他の作品も読んでみてくださいね。 (1月31日 18時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
れーと - 初コメ失礼します。どうしてこんな神作がいかにもふざけている名前のイベントに参加してくれたのか分からなかったです。イベント参加ありがとうございますorz。(絵がおじょうずなっこって) (1月31日 17時) (レス) @page34 id: 52d6184189 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ - 白うささん» お読みいただきありがとうございます! またまだ未熟なところもありますが、私の作品をもっと色んな知ってもらえるようにがんばっていきたいと思います! (1月5日 20時) (レス) id: 5392177912 (このIDを非表示/違反報告)
白うさ - あ、あれ?最後まで読んだら目から鼻水が((初コメ失礼します!!最高な作品でした!!ありがとうございます!!(?) (1月5日 20時) (レス) @page19 id: a68f5e51e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ガシヤマ | 作成日時:2024年1月1日 19時