稲妻町へ ページ10
〜貴方side〜
電車に揺られ、私は久しぶりに稲妻町へとやって来た。
この町へ来るのは1ヶ月ぶりだ。友達と雷門サッカー部の練習試合を観戦しに行った時以来。
そして、今回私が向かうべきなのも雷門中。真子の情報によれば、その生徒の中に例の魔法少年がいる。その情報を頼りに、私は雷門中周辺を探ってみることにした。
今日は土曜日なので、部活終わりの生徒たちを探る。魔法少女や魔法少年にとって部活が終わる夕方の時間帯は、魔人狩りに適しているからだ。
日が沈み、薄暗く、人の負の感情が溜まりやすい時間。それらに影響されるのか魔人の活動も活発になる。
けれど私自身は、この町で魔人退治はしない。それは魔法少年少女ならば誰もが知る、暗黙の“ルール”を破ることに他ならないから。
魔人の卵であるグリーフシードは、私たちにとって欠かせないアイテム。そのグリーフシードを落とすのは当然ながら魔人だけ。つまり、数に限りがある。
魔力を少しでも補充するために、多くの魔人を狩りたいと思う魔法少女や魔法少年が大半だろう。
しかしそれを放置すると、他の人に獲物を横取りされてグリーフシードを手に入れられない人が出てきてしまう。それを防ぐため、『自分の担当地区から外の魔人は狩らない』というルールが存在する。
私の担当は当然、自分の住む舟ヶ丘市。稲妻町で魔人を狩るのはルール違反。
魔人がいつ人を襲うかわからないのに縄張り争いなんてしてる場合じゃないと思うけど、“グリーフシード＞人々の命”な思考の魔法少年少女が多いのは事実。
貴方「さてと。午後の部活が終わる時間までまだ結構ありそうだな」
駅を出て歩きながら、これからの予定を頭の中で整理する。すると突然、誰かに話しかけられた。
？？「なあ、君」
貴方「はッ、はい！？」
勢いよく振り向くと、そこにいたのは見覚えのある人物。
貴方「あれ、あなたは確か雷門の……
霧野……蘭丸くん……だよね？」
そう、見間違えるはずもない。長い桃色の髪をツインテールにした美少年。
雷門サッカー部のDF、霧野蘭丸くんだ。
彼がなぜここに？
霧野「そういう君は、星宮Aだろう？ 天河原中の」
貴方「えっ」
マジかこの人。地区予選で敗れ去った学校の、それも一介のマネージャーに過ぎない私を知っているって。
それとも、部活以外の所で会ったことがあるとか？
うーん、なんだったっけ。
霧野「覚えているか？ 地区予選でのこと」
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作者名：サリア | 作成日時：2020年2月6日 21時
