参拝 ページ40
〜倉間side〜
好奇心に負けた俺は、その日の夜霧野と待ち合わせし、一緒に百雷神社へと向かった。
噂なんてくだらないと思ってた。
けれど、南沢さんが見つからない現実に直面し、藁にもすがる気持ちになった。
こんなので南沢さんが見つかるなら苦労しないはずだ。
でも何もしないくらいなら、神頼みだって悪くない。そう思ったんだ。
俺と霧野は石階段を登り、ブログやSNSに載っていた通り百雷神社へ向かった。
神社はもう閉まっていた。が、サッカー部で鍛えられたジャンプ力を活かし、塀を乗り越える。
いつもと変わらない百雷神社の光景だが、夜なので多少不気味だ。
すると俺の手には、いつの間にか絵馬と筆が握られていた。
［さあ書いて。アナタが会いたいと思う人］
［アナタが知りたいと思う人］
どこからか声が聞こえてきて、真っ暗だった神社の景色が少しずつ変わり始める。
神社と異空間が混ざり合ったような……不思議な場所へと迷い込んでいた。
ここにこの筆で、名前を書くってことか？
そう直感して、すぐに『南沢篤志』と書き込む。
筆なんて使い慣れていないので少し歪んでしまったが、読む分には問題ない。
倉間「霧野……お前は誰の名前を書くんだ？ やっぱり、昼間言ってたAってやつ？」
あまりに非現実的なことが起こった驚きからずっと黙り込んでいたが、それだけ気になったので話しかけた。
霧野はしばらく筆を構えたまま動かなかったが、やがて意を決したようにスラスラと名前を書く。
＿＿＿『神童拓人』
倉間「あ？ 結局神童かよ」
霧野「Aにしようとも思ったんだが……どうしても、神童に聞きたいことがあるんだ」
倉間「ふーん」
絵馬を持ったまま、正しい参拝方法でお参りする。
緊張からか、心臓がドキドキと音を立てる。絵馬を持つ手が汗ばむ。
本当にこれで、南沢さんは現れるのだろうか。そう思った次の瞬間。
突然、周りの景色が一転した。
さっきまで神社にいたのに、今いるのは綺麗な湖の上。水面が日の光を受けて輝いている。
俺たちはいつの間にか、湖にかかった長い長い橋の真ん中に立っていた。
そして、気づけば目の前には大きな鳥居。なぜか鳥居の向こう側は霞んでしまっていて、よく見えない。
倉間「……ここを、通り抜けるのか？」
霧野「多分、な……」
正直怖い。だが、ここまで来たからには行くしかない。
俺と霧野は、鳥居の中へと入って行った。
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作者名：サリア | 作成日時：2020年2月6日 21時
