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32 白き記憶 ページ33

目覚めれば其処は、数ある潜伏先の一部屋だと、Aは瞬時に理解する。

 
「…………」


 どれくらい、眠っていたのか。


 一際白い天井に、
 一際白いベッド、カーテン。


 私の、今の家みたいな場所。


 何時から帰ってないっけ?
 ――また先生に、怒られちゃうかな。


「…………………」


 太宰さん、来たよね。
 だから春野さんもナオミちゃんも、無事だよね。

 なんだあの人、ちゃんと働いてくれたじゃん。
 お茶を一緒に飲むくらいなら、考えてあげてもいいかな。


 あと、
 そして、敦君。


「………」


 大丈夫かな。
 自分を、責めていなければいいけど……。


 思えば、
 私も、彼も、


 皆を守ろうとした。


 その結果が、これである。


「…………」


 私、決めたのに。
 折角彼処から、出て来たのに。


 やっぱり、
 この世界には、私は――


「Aちゃん!」


 勢い良く掛け声と共に入って来たのは、


 見なくても解った。
 声だけで、解った。


 だから反射的に、布団の中にAは包まった。


「………」


 ど、とうして?


 て、ていうか、ノックも無しに入って来るなんて、良い度胸。
 矢張りこの男、全くの駄目駄目である。


「あ……あの、身体、だ、大丈夫かなッて……ごめンなさい」


 身体は然程心配に至らないけど、
 精神的にはどん底だ。


 入室した途端に全力で拒否られた事で、話し声は段々小さくなっていく。


 が。


「あ、えッと、その……御礼を云いにきたンだ。……ありがとう」


 谷崎潤一郎の、


 その言葉に、ビクッとするA。


 え?


 少しだけ布団の裾を開けると、見えた床に彼の顔が歪んで映る。
 けれどこの口調は、笑みをのせている顔の時の。


「その、ポートマフィアにやられたッて太宰さんからきいたよ……頑張ってくれたンだッて。ナオミと春野さんを、助けてくれて……本当に、ありがとう」

「…………」


 ああ……
 太宰さん、かなり掻い摘んでいる。


 敦君がやったって、云ってないんだ。


 まあ、ポートマフィアがやったって、嘘ではないし。
 そんなことで態々やってきたのか、この男は。


「ボクは組合の人達を、警察に送っていたンだ……近くに居たのに、肝心な時に加勢出来なくて、ごめン」


 何でこの人、謝罪と感謝を交互にするかな。
 布団の中で悶々とするA。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 谷崎潤一郎 , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年12月22日 22時

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