21 その渇きにビスケットを ページ22
車の走る音。
人々のざわめき、
鳥の羽ばたき、
信号のメロディ。
そこは、よく見知った交差点。
捕らえられた人々は皆呆けてて、
Aと谷崎も、微妙な距離感でアスファルトの上に座り込んでいた。
足音。
見れば、モンゴメリが怒り顔で何処かへ行ってしまって。
泣いていた。
どうしたのだろうか。
“同じ女の子なんて嬉しいわ!”
“私たち、お友達になれるかしら?”
彼女は――
「…………」
それにしても敦君、
一体どんな声掛けをしたんだ……
そして、
「あぁん兄様ー!ナオミ怖かったぁ!」
谷崎兄妹、感動の再会。
何時も通り、ムカムカしているAが、そこにいた。
でも、
ナオミちゃんが無事で良かった。
あの時、助けられなかったから、
本当に、良かった。
「Aさんも、ありがとうございます!ナオミ、感激ですわ!」
「……………」
私、何もしていないけど。
微笑んで、じゃれつくナオミの頭を撫でた。
「ご心配おかけしました!嬉しいですわね、兄様!見つかって、良かったですわね!」
再度兄に抱き着くナオミ。
そこで初めて、Aは安堵した。
そして気付く。
あ――私も、
助けて貰った御礼とか、云わなきゃ、駄目?
「………」
端末に、『ありがとうございます。』『ありがとう。』『御礼申し上げます。』の画面はある。
谷崎潤一郎に、どれかを見せるだけで、いい。
簡単簡単、造作もない。
「…………」
「ん?え、ええッと、ど、どうしたのAちゃん」
ええっと。
Aはポケットに手を入れ、
掴むと、
それを思いっきり投げた、彼の顔へ。
「ぼへッ?!」
「あらビスケット!まあ御礼ですか、ありがとうございますAさん!やりましたわね、兄様!」
顔を押さえる兄に、そのビスケットの入った小さな包みを持たせる妹を見て、次にAが敦の方へ振り向くと。
彼に、鏡花が駆け寄ったのが見えた。
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年12月22日 22時