06 苦々しい心地 ページ7
依頼終わりの宮沢賢治が元気一杯に入ってきて、
「ご苦労だったな、賢治」
「はい、ばっちりです!」
「あら兄様も!お仕事お疲れ様です!」
「ぐえッ」
セーラー服のスカーフを揺らし、谷崎ナオミが勢い良くくっついた、今しがた社に戻ってきた、もう一人の青年。
谷崎潤一郎。
武装探偵社において主に密偵を専門とする社員。
谷崎ナオミの兄で、
基本的に穏やかな性格の、料理からヘリの操縦まで、何でも出来るスーパーお兄ちゃん。
「あ――えッと、Aちゃん久し振り……その」
朗らかな笑顔で谷崎がAに話しかけるが、彼女は彼を一瞥すると――
「…………」
「あ、わ!」
黙ったまま、踵を返し、そこの窓硝子の中に入っていってしまった。
敦はまだまだ、慣れない。
咄嗟のことだったからなのか、彼女の帽子が、ほとりと落ちて行った。
その帽子を、谷崎は拾う。
「あぁ……Aが帰っちまったじゃないか。谷崎、アンタまだ許されてないのかイ」
「あ、はい、そうなンです。済みませン与謝野女医……」
許されていない?
何がなのだろう。
「あの、Aさんが、僕の先輩で後輩、というのはどういうことですか?」
敦はそのままの疑問をぶつける。与謝野晶子が腕を組みながら反応した。
「懐かしいねェ」
「はい…………」
そして、何かを思い出している様な、そんな表情の谷崎は、帽子から視線を上げる。
「敦君、君の入社試験の時にさ、ボクがナオミを人質にして立て籠もッた犯人をやッたじゃない?」
「はい」
忘れもしない、中島敦の入社試験。
僕は本気で人質を助ける為に、爆発寸前の爆弾を腹に抱えたことで、その心意気を買われ、合格を果たした。
「あの事件、実際にあッた事件を元にしてるンだけどね」
「え、そうなんですか!」
あの、立て籠もり事件が、
実際にあった事件?!
「で、当時……その事件を解決したのが、Aちゃんなンだ」
「え、えぇ?」
素っ頓狂な声を出してしまった。
Aさんが、
解決した事件?
え、じゃあ、
犯人は?
爆弾は?
Aさんの――異能力って?
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年12月22日 22時