2 願いを叶える異能の少女は太宰治と恋をする【文スト】

50　罪と罰と星 ページ10

だけど大丈夫。


そんな苦悩も、もうすぐ終わる。


　みんなの命はそれぞれ奪っているけれど、私はその度に寿命が削られているから。


　私の異能は、

　万物の法則も、
　生物の生老病死も、
　宇宙の哲学も、
　世界の秘密も、

　努力や思いや運命も、

　全部ひっくるめて、
　無理に壊して繋げて、
　人の願いを叶える。

　そして願いを叶えるには、等価交換が必要で。


　その分の、等価交換が必要だから。


　半年以上も前のこと、幼馴染の少し年上のお姉ちゃんが死んだ。

　病気でも怪我でもなく、ころりと。

　彼女は、寿命で、死んだ。


　お姉ちゃんの願いは、一つだけ叶えたことがあった。

　それは、まだ幼い頃、それぞれの両親が出掛けていて、二人で夜、寝ていた時に現れた小さな侵入者。


“ネズミ、ネズミこわい！どっかやって、ころしちゃって！おねがい！”


　わかった！


　わたしはいのった。

　ねずみさん、おそとへいってしんでください。


　ねずみは、急にヨボヨボと壁づたいを這い、開けていた窓から出て行くと、ぽとりと地面に倒れた。


“ありがとう！”


　おねえちゃんはよろこんだ。
　おねえちゃんのおねがいをかなえたから。


　それとどうとうの、いのちをうばったから。


　お姉ちゃんは死んだ。


　それにより、私の異能は発覚した訳だけど。


　発覚したのは。
　気づいたのは。


　私は、みんなが幸せになるならと、
　笑ってくれるならと、

　願いの内容なんてどうでも良くて、


　ただ、みんなの為に異能を使っていたこと。


　助けたい。
　救いたい。
　笑ってほしい。

　その為に、使っていた。


　だから。


　私ももうすぐ、死ぬ。


　大好きな人たちと別れる。
　

　でもそれは、もう、経験した。
　死ぬより辛かった。


　あの箱の中で過ごすのは、死んでいるのと同じだった。


　だから私は、
　石Aは。

　あの箱の中から、多分、自分から――

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