84 百億分の一星 ページ44
「太宰さんが……謝る事はないよ」
彼が少しだけ、動いた気がした。
「太宰さんは、私を光の中に引き上げてくれた。でも私から手を離した。なのに、また、差し伸べてくれるんだね」
何故私たちは、出会えたのだろう。
「でも、その手をもう一度、とっていいのか、わたしはまだわからない」
箱からは出られた。
それなのに何も変わらない。
箱から出ようが出まいが、
私は一生を終える。
それが一番良い事だと思っていた。
「ほんとうは、わかって、いるんだけど」
こんな異能は、
こんな私は、
居ない方が、良いと思っていた。
「このおもいは、とどかないって。つたえたいけど、とおくて、ふみだせない」
居なければ、
悪い事は、起きないと思っていた。
その方が、幾らか、素敵だと。
だから。
異能は使わず、
悪い事はせず、
善い事をして、
人に優しく、
笑って、生きて、死んで行こう。
って、思っていたのに。
「Aちゃん。私は、大莫迦だ。そして、君もだ」
地表から、彼の声がする。
愛しくて堪らない、欲しくて堪らない、私の。
「そのハコの中からは、君は本当は出られていない。其の事に気付いているのに、気付かないフリをして」
地面から、彼は続ける。
「然し人は解ってしまう。人は自分を救済する為に生きているから……死ぬ間際にそれが、判る」
Aは樹を通り過ぎ、地上の太宰を見続けた。
「だから、判っちゃったでしょ?」
そう。
一緒に死のうと、
本気で、死ぬ間際まで行ったから。
うん、判っちゃった。
私の、
本当の、一番の願い。
一生を賭して、叶えたい願いを。
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午(プロフ) - 雪さん» 雪様、ご感想ありがとうございます! 文章が綺麗っていわれてとーっても嬉しいです! 雪様にお会い出来て良かったです! また遊びに来てください! (2023年3月29日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました…語彙力ないせいで上手く言葉に出来ないのが本当に悔しい…本当に文章が綺麗で惹き込まれます…この小説と出会えてほんとうに良かったです…( ; ; )♡ (2023年3月29日 5時) (レス) @page49 id: 235d41d493 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - yuriさん» yuri様初めまして、ご感想ありがとうございます!やばいくらい泣かれましたか……うぉぉありがとうございます!夢主を幸せに出来ました、思う存分叫んでください!これからも頑張ります。ありがとうございました! (2021年4月19日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - はじめまして!初めてこの作品を読ませていただいたものです!感想を一つ2つ言いたいのですがあの泣きましたすごいもおあのやばいぐらいはい。それでもう一つ夢主ちゃん最終幸せに生きれてよかったねぇて叫びたい└(^o^)┘ではこれからも応援してます!頑張って下さい (2021年4月19日 20時) (レス) id: 2cc33a2b3d (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - シオリ様、ご読了と感想についてのご質問有難うございます!小説用Twitterはありません!既に下記文面で喜んで頂けた事が判明しているので、宜しければ此方にご感想を書いて頂くか、何もしなくても大丈夫です!お気軽に、宜しくお願い致します!此れからも頑張ります! (2020年1月20日 21時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年7月14日 14時