73 蛇に睨まれた星 ページ33
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください……お、落ち着いて、落ち着いてください……」
あれ。
おや。
探偵社の面々は、豆鉄砲を喰らった鳩の様な顔になる。
先程までの威勢は、
先程までの鋭意は、
先程までの勇気が、
雲散霧消する様。
第一声を放ったにも関わらず、Aは不安げな顔で、刀を持った手を震わし、其処に突っ立ってアワアワしていた。
一般の子どもが、流石に連続で犯人を相手取るのは矢張り荷が重かったか。
――小僧の時の様だな。
同じ形式の、かなり前にあった入社試験を思い出したのか、国木田はギュッとした顔で行く末を見守る。
この少女、先刻と今では、まるで人が違う。
矢張り少女、経験が少ないのか。
それとも。
「えっと……此処で爆発したら、お兄さんも、その子も、私も、飼育員さんや動物たちも、植物も、死んじゃいますよ……?」
無意識だろうか。
交渉を、始めた。
確かに、頼れる警察は違う犯人を取り押さえている。
他に頼れる人は、誰もいない。
だから。
震えながらも、未知の、敵わない相手と解っていても、尚。
入社試験を受ける時、斯様な新人は多い。
入社試験を受けてもいいと判断された、奴には。
こんな時でも、何時も通りチャラチャラしていたのは、あの包帯無駄遣い装置位か。
「………………」
呆然と、男はAを見据える。その瞳に光は無く、然し異様に落ち着きを払っていて。
「いいじゃない、かァ、それで」
空を見上げた。
「この不幸な世界が消える、善い事ではないかィ?」
「よいこと……?」
唾を飲み込み、Aは刀を握る力だけを強くした。但し体勢は、地面にへたり込んだままで。
「…………金」
その兆しを見せず、彼女の星輝く瞳に映る男は云う。
「会社の金を、横流ししたって……俺はしていないのに……みんな、俺がやったって云うんだ……本当に、してないのに……悪くないのに」
ペラペラと、
ヒョロヒョロと、
まるで上の空で男は綴った。
「無実が証明された時には……もう彼女は何処かに消えていた……信じていたのに、待っていてくれると――だから、盗みも沢山、やった」
国木田は、ハッとする。
……現在逃亡中の、強盗犯か……!
真逆、本物の事件に巻き込んでしまうとは……与謝野女医と賢治は、無事なのか?
「この世界を消す、死ぬ事こそ、最大の救いなんだよォ……」
377人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
午(プロフ) - 雪さん» 雪様、ご感想ありがとうございます! 文章が綺麗っていわれてとーっても嬉しいです! 雪様にお会い出来て良かったです! また遊びに来てください! (2023年3月29日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました…語彙力ないせいで上手く言葉に出来ないのが本当に悔しい…本当に文章が綺麗で惹き込まれます…この小説と出会えてほんとうに良かったです…( ; ; )♡ (2023年3月29日 5時) (レス) @page49 id: 235d41d493 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - yuriさん» yuri様初めまして、ご感想ありがとうございます!やばいくらい泣かれましたか……うぉぉありがとうございます!夢主を幸せに出来ました、思う存分叫んでください!これからも頑張ります。ありがとうございました! (2021年4月19日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - はじめまして!初めてこの作品を読ませていただいたものです!感想を一つ2つ言いたいのですがあの泣きましたすごいもおあのやばいぐらいはい。それでもう一つ夢主ちゃん最終幸せに生きれてよかったねぇて叫びたい└(^o^)┘ではこれからも応援してます!頑張って下さい (2021年4月19日 20時) (レス) id: 2cc33a2b3d (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - シオリ様、ご読了と感想についてのご質問有難うございます!小説用Twitterはありません!既に下記文面で喜んで頂けた事が判明しているので、宜しければ此方にご感想を書いて頂くか、何もしなくても大丈夫です!お気軽に、宜しくお願い致します!此れからも頑張ります! (2020年1月20日 21時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:午 | 作成日時:2019年7月14日 14時