太宰治 蕨餅【ハイド様Req.】 ページ7
「ぷる、もち、はあ」
恍惚とした表情で、太宰は目を細めた。
Aは泣きそうな顔になった。
とろとろした食感、然しコシがあり、たっぷりとまぶされた香ばしい黄粉が甘く絡む、蕨餅。
「…………」
「ほら見てA、今日迄の限定蕨餅!並んだけど、購入出来たのだよ!丁度売切になった!」
「ああ……」
「食べる?あ、でもAはもう直ぐ健康診断だから、何か食べちゃ、駄目だよね?」
かなり溌溂とした彼の声を聞きながら、Aはデスクに顔を沈める。
「これ、賞味期限があと30分なんだよねぇ、残念でした!」
「うぅ……悪魔」
そんなAを見て、正面に座る国木田は同情をするばかり。
太宰治は何故、我々の困る顔を見る為なら何でもするのだろうか?
「ねぇA、蕨餅と葛餅の違い、わかる?」
「えぇ? 蕨と葛……原料が先ず違うじゃないですか」
Aは、与謝野先生早くしてと祈りながら、それでも何とか受け答える。
「そうだね。而も見た目も全く違うし!」
蕨餅を頬張りながら、目の前で語るに語ってくるサボり魔に、Aになす術等無いに等しかった。
「蕨の地下茎から取れる澱粉から作られたものだけが本蕨。これは本蕨を使った蕨餅!
高価だから、最近は芋とかタピオカとかの澱粉を用いる蕨餅が増えてきたけど、それを考えたら贅沢!」
「……何でそんなに詳しいんですか」
「前に並んでたご婦人が懇切丁寧に教えてくれたのだよ!」
美人だったのかな……とか思いながら、きゅううっとなっているお腹を押さえた。
蕨餅の様な繊細な物でも、空腹には毒である。
「透明ではなく、一寸濁っているのが本蕨を使った蕨餅なんだって。私、スーパーの透明な蕨餅も好きだけど、ほら」
蕨餅を透かすが、視線が見えない二人。
「…………」
互いに沈黙。
先程の威勢は何処へ行ったのやら、周りの思考は、早よ仕事しろと満場一致だが。
「太宰さんに蕨餅と云えば……太宰府に美味しい蕨餅屋さんがあるみたいです」
静寂を切ったのは、弱々しいAの声。
「あらそうなの」
そしてゆっくり立ち上がると同時に、医務室から与謝野の呼び声。
「はい、頑張ってね」
太宰は、
その蕨餅を、
Aの唇に押し当てた。
「…………」
妙に心地良い、柔さと甘味を感じながら。
赤い顔のAは医務室へ、
太宰はその蕨餅を、
ぱくりと食べた。
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午(プロフ) - 美紅さん» 美紅様、リクエストありがとうございました。ごめんなさい、リクエストは現在受け付けておりません。ショートケーキは苺たっぷりの物が好きですね。いつもありがとうございます。また宜しくお願いします! (2021年10月28日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
美紅(プロフ) - リクはショートケーキの好物をお願いします (2021年10月26日 18時) (レス) id: 2c9c8b9b13 (このIDを非表示/違反報告)
もな - ごめんなさい!!!私の不注意で…!いや私アイス大好きなんですよ〜!関係ないんですけど() (2021年6月19日 0時) (レス) id: 2d978a239f (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - もなさん» もな様、先日のリクのご感想ありがとうございました!そして新たなリクエストをありがとうございます。申し訳ありませんが、現在リクは受け付けておりません、ご了承ください。この時期はずっとアイス食べたいですね!またのご来場をお待ちしております! (2021年6月12日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
もな - ありがとうございました…!!とっても良かったです………!!!!!出来ればリクエストでマーク・Tさんでアイスでお願いしたいです……!出来ればお願いします!! (2021年6月12日 14時) (レス) id: 2d978a239f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2020年1月1日 23時